谷中地区で「まちの作戦会議」というものがありまして
最近乗っかっている活動について紹介がてら、書いてみます。
私が先月よりお邪魔している、"まちの作戦会議"という活動があります。
母体となるのは東京文化資源会議という大きな流れで、2020年以降の新しい東京のあり方を提案していくための専門家組織です。
山手線右側・都心北部は、芸術文化の上野、江戸のあるまち谷根千、東京大学を擁する本郷、ポップカルチャーの秋葉原、神田明神のように、東京でも有数の文化資源が集積しているエリアであり、これらを有効活用していくようなアクションを起こし、有機的に繋げていこうという東京文化資源区構想があります。
まちの作戦会議は、その中の、谷中地区における動き。
(やなか銀座の名所、ゆうやけだんだん)
谷中地区は、やなか銀座や寺町独特の風情ある雰囲気が持ち味であり、非常に魅力的なエリアです。
谷根千ブームのきっかけとなった、森まゆみさん創始の地域雑誌「谷根千」、谷中学校、芸工展、近年は築60年の古民家リベーションのHAGISOなど、まちの魅力を増すための動きは数え切れないほどあり、今さら文化資源だなんだと主張をする必要がないほど十分元気な地域と思えます。
(台東区谷中は歴史的風土100選に選ばれる)
しかし実際は、他地区と同様にここも、継承という点で危機的な状況にあるのです。
エリア内のあちこちが、地域特有のコンテクスト・遺伝子を顧みない変化の圧力に晒されています。
個人敷地でも同様のことは起きており、相続税対策等で手放した敷地が、ミニ戸建の分譲となるケースは枚挙に暇がありません。
これは密集市街地の再生産となっているほか、大量生産仕様で設計された味気ない住宅は、確実に谷中地区のエリアとしての魅力を蝕んでいる状況にあると言えます。
しかしこれは、おそらく東京の各地で起きている事象。
加えて谷中では、他の要素もあります。
(東京で最後の富士見坂は、マンション開発により眺望を失った)
もちろん無用な都市計画道路により住民が立ち退く必要がなくなった、という単純な話ではなく、計画線があるからこそ高容積建築の実効的な抑止力となっていた状況が、変化するかもしれないということです。
谷中は老朽建物が密度高く集積し、防災性に大きな課題があるという事情もあります。
その密集事業においては、老朽化建築物の更新・耐火建築物化によるまちの不燃化や、それに伴うセットバックによる道路拡幅による不燃領域率の向上といったハード整備こそが評価指標であり、風情ある地区としての谷中とはまるで逆方向の未来へ向かうものと言わざるをえません。
谷中をめぐるこうした危機の中、魅力あるまちを守り、かつ向上させるための強いビジョンを確立することが重要になります。
もちろん主体は住民の方々ですが、お手伝いのため、学生と専門家により進めていくプロジェクトスクール(演習に似た形式で進めるまちづくり提案活動)こそが、「まちの作戦会議」なわけです。
谷中地区で残していきたい文化資源とは何か?どうすれば残していくことができるか?いかに情報を発信していくか?といったテーマを、フィールドワークを通じて、余所者かつ専門的な視点で探っています。
ある特定の方向を目指すのではなく、個人の問題意識や研究関心を軸に進むことが許されているので、その点が"スクール"なのでしょうかね。
早くも、仕事と距離を言い訳にしたいほど、満足な貢献ができていない状況ですが、食らいついていけたらと思っています。