【視察報告】エリアマネジメントは豊橋のまちなかに賑わいを戻すか - 「豊橋プロジェクト(仮称) 第2回」
先日の豊橋出張にて依頼元から改めて業務内容の説明があったので、支障のない程度に紹介してみます。
依頼元はこの地域に大きな地盤を持つインフラ企業グループであり、今回の再開発事業における地権者にもなっています。
それゆえに、第一義的にはデベロッパーとしての①再開発後の資産価値の向上が至上命題となります。
しかしこの次元における現段階の不安要素として、”賑わいの連続性”という点があることを前回記事で述べました。
今回の再開発エリアが、駅前から離れているのです。
駅前には、駅直結のココラアベニュー、ココラフロントがありますが、それらと再開発事業地区の間には比較的空地も多く、商業密度も低いため歩行者回遊性に難があると言えます。
中高層部分に入る予定の住宅であれば(じゅうぶんに駅近なので)それでも問題はありませんが、商業部分については歩行者の駅前回遊ルート上に入りにくいのです。
【視察報告】豊橋駅前大通二丁目第1種市街地再発事業と周辺エリア - 「豊橋プロジェクト(仮称) 第1回」 - まちづくり、例えばこんなふうに
加えて、今回の再開発計画には公共施設として「まちなか図書館」と「広場」の設置がすでに決まっており、事業後の所有者となる豊橋市が利害関係者となっています。
しかしお馴染みのタテ割り行政ゆえ、事業後の管理運営についてはそれぞれの担当部署において検討が進められているのみで、同じ再開発事業としてエリア一体的な魅力を増すような”横串的な動き”がないまま、実施設計が進んでしまっているのです。
これらをまとめて、まずは再開発事業地区としての魅力や資産価値を上げたい、ということが一つ目の問題意識であると解釈しました。
そして2つ目に、②豊橋駅前エリアの活性化という命題も視野に入っています。
今回の依頼元は単なる不動産屋さんというわけではなく、豊橋市のみならず、ひいては東三河エリアの地域経済と運命共同体的状況にあると言えるほど地域密着な企業グループです。
豊橋の経済が細れば、企業も右肩下がりとなるわけです。
特に不動産事業において、その要素が強い。
豊橋駅前すでに完了したこんな再開発ビルとか、
(ココラフロント/COCOLAFRONT 豊橋駅前[施設概要]より)
こんな再開発ビルとか、
(豊橋駅隣接複合ショッピングモール・ココラアベニュー/COCOLA AVENUE[アクセス]より)
所有・管理・運営体制において大いに関係が深い。
これらが分布する駅前大通南エリア、ひいては駅前エリア全体として活性化が求められる事情があるわけです。
そんな中で計画されている今回の再開発事業においても、前2棟を含む既存ストックといかにシナジー効果を発揮させて持続ある繁栄を実現するかという。
さて、ここからが今回のプロジェクトについて。
こうした二段階の課題に対して、「エリアマネジメント」という手法で解決を図ってほしい、というのが大まかな依頼内容となっています。
- 作者: 小林重敬,青山公三,保井美樹,長谷川隆三,御手洗潤,中井検裕,村木美貴,後藤太一,大阪市都市計画局計画部都市計画課,東京都都市整備局都市づくり政策部,NPO法人大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ),名古屋駅地区街づくり協議会,梅田地区エリアマネジメント実践連絡会,一般社団法人グランフロント大阪TMO,エキサイトよこはまエリアマネジメント協議会,博多まちづくり推進協議会,We Love 天神協議会/一般社団法人We Love 天神,銀座街づくり会議・銀座デザイン協議会,日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会,一般社団法人淡路エリアマネジメント,御堂筋まちづくりネットワーク,栄ミナミ地域活性化協議会,札幌駅前通まちづくり株式会社,浜松まちなかマネジメント株式会社,六本木ヒルズ統一管理者,一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会,秋葉原タウンマネジメント株式会社,一般社団法人横浜みなとみらい21,一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会,旧居留地連絡協議会,竹芝地区エリアマネジメント準備室
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エリアマネジメントという手法・概念については私も不勉強なのですが、
経済的持続可能性に難のあった従来的な活性化(=補助金使ってイベント開催、効果測定もない自己満足的活性化)への反旗として、
あくまで商業をはじめとした地域経済をいかにまわすかという視点で、一定の範囲を持つエリアを管理運営するという考え方だと認識しています。
その際にポイントとなるのは、既存の活動組織(商店会、アーティスト、活動家など分野不問、もちろん行政も)を横串につなぎ、連携のためのストーリーを描くエリアマネジメント組織(協議体)の存在です。
類似の手法を使った事例は、東京における大丸有地区や秋葉原地区、淡路町ワテラスなどにみられます。
しかし繰り返すように、エリアマネジメントとは手法に過ぎず、それを用いていかなる問題解決を図るかという目的が重要となります。
今後はその方面について、検討を進めていくことになります。