no pleasure, no life(旧ブログ名:まちづくり、例えばこんなふうに)

意固地になるほどに"まちづくり"が気になって仕方ない。自分の関わったまちづくりの活動・調査の記録を中心にしつつ、"都市""街の変化"の話題など。 Keyword→まちづくり/都市計画/荒川区町屋/蒲郡/豊橋/三河/谷中

複合施設「ゆいの森あらかわ」って、結局何なの?という話。 - 「町屋銀座まちづくり? 第23回」

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(荒川区HPより)

 

町屋エリアからやや離れ、荒川二丁目の話題。

荒川区の区政情報でおそらく一番プッシュされていると思われる、「ゆいの森あらかわ」についてです。

 

「ゆいの森あらかわ」は、来年3月26日に開館となる、図書館・文学館・子ども施設が一体となった区立複合施設です。

 区では、中央図書館、吉村昭記念文学館、子ども施設が一体となった、赤ちゃんから高齢者まですべての世代の方が利用でき、これまでにない新しい発想の魅力ある施設となるよう、「ゆいの森あらかわ」の整備を進めています。

(荒川区HPより)

平成28年度予算において43億3129万円が計上されている大きな事業です。(もちろん単年度事業ではない)

整備の背景としては、付近に立地する区立荒川図書館(昭和37年築で区内最古)の老朽化対策のほか、荒川区の政策テーマ「子育て教育都市」の実現を図ること。

わかりやすく言えば、大きな複合施設をつくることで、荒川区の魅力をさらにアピールしようということです。

 本施設の整備によって、「子育て教育都市」及び「文化創造都市」の実現を目指しています。

(荒川区HPより)

どんな状態になれば実現されたことになるのかは曖昧なところがあるものの、目指している方向はなんとなく理解できます。

 

まあ、区がどんなお題目を設定するのかはよいのです。

問題は、区民というか、周りにお住いの方にどんな恩恵があるのかということ。

新しい図書館ができる、だけであればイメージしやすいのですが、「図書館を含む複合施設ができる」 となると、どうなるのでしょうか。

 

 繰り返しになりますが、図書館・文学館・子ども施設の三機能の複合施設ができるわけです。

図書館以外の機能は、一体どんなものでしょうか。

区では、以下のように説明されています。

 

吉村昭文学館

ふるさと荒川を愛した作家・吉村昭氏の作品と足跡を基礎として、幅広い文化活動の展開を図り、荒川区の文化振興に寄与する文学館

(荒川区「(仮称)吉村昭記念文学館基本構想」より)

 

荒川区に生まれ、数多くの作品を世に残した作家、吉村昭

区の自慢である彼の功績を讃える施設を作り、今後恒久的に讃えていく記念碑とする、それはわかります。

 

イメージでは、もともと作家・吉村昭のファンである方々(荒川区内外問わず)にとっての聖地になる可能性はあれど、もともと吉村昭に対する知名度の低かった一般区民が足を運ぶ可能性まであるかと言えば疑問が残ります。

郷土愛の醸成、はどうなんだろう。。?

 

出会いの形としてあり得るのは、文学館以外の機能、例えば図書館・子ども施設を目当てで来訪した方々が、近接する文学館のコーナを目にすることで、我が区にはこんな人がいたのかと偶然認識するくらいか。

偶然の出会いで、吉村昭のことがどれだけ伝わるのか。。

子供たちにとって10年20年先の未来に意味を持つのかもしれません。それは教育に似た、不確かな未来への投資なのかもしれません。

 

自分の結論的には、吉村昭文学館という機能がリーチする層はかなり限定されるような気がしています。

それは私の教養の無さによるものでしょうが、1+1=2になる以上のものではないような気がします。

 

 

子ども施設

子ども施設(ゆいの森子どもひろば)では、理科実験やワークショップ等を通じて子どもたちの夢や生きる力を育みます。

(荒川区HPより)

 

子育て世代にとって便利な機能が入るそうです。

施設としては乳幼児向けの遊び場やおはなしコーナー、有料の託児室、絵本コーナーが1Fに、加えてワークショップ等ができる部屋、児童書コーナーや体験コーナーが2Fにできるようです。

ラインナップを見ると、確かに育児をする親御さんが行ってありがたい機能が集まるようです。

小さな子どもを、日中連れて行く選択肢になり得るだろうなーと思います。

 

ハード以上に大切になるのがサービスで、託児室のスタッフの接遇や、魅力あるコンテンツが継続的に提供できるかというところが試されるのではないでしょうか。

 

こちらが施設内部の完成予定図で、かなり具体的な空間的なイメージを持つことができます。

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/kusei/fukugousisetu/hukugousisetsu.files/hukugougaikan.pdf

 

施設としてのプロフィールは以上のものなのですが、より重要なのが、どう運営されるかということです。

特に図書館は「読む」「調べる」だけでなく、近年は「つながる」「はじめる」ための機能まで期待されている風潮があります。

読書を通じた交流がテーマのまちライブラリーは、過去に紹介したことがありました。

そのほか、まちづくりセンター的な機能を持った図書館がコミュニティの起点となったという例も、枚挙にいとまがありません。

 

それには行政の努力もさることながら、区民の皆さんが"使い倒す"という意識も大事になるでしょう。

どうか、巨大なハコモノが負のレガシーとなることなく、使い方や運営の工夫や、付近に点在する荒川区の他の資源と結びつけた、エリア単位でのシナジー効果が発揮されることを強く期待します。