役所就職志望の建築学生への参考に - 「なぜ役所を辞めたのか?第1回 役所における建築の仕事」
先日、市役所勤務時代の職種同期の忘年会にお邪魔しました。
実は退職してから集まりに顔を一切出しておらず、緊張しながら久々の横浜へ。
どんな顔を見せれば。。。?
そんな心配はいらぬものでした。
フタを開けると、なんとそれはサプライズの送別会でした。
緊張で過呼吸になりながら職場同期の忘年会に行ったらサプライズで送別会されて寄書きと花束もらってカラオケまで楽しんだのに終電逃しそうになって豪雨の中駅まで全力疾走したら紙袋の底が抜けて寄書きを紛失したのが今。。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月22日
職種同期より送られた花束
さて、そういえば退職に関する記事を書いていませんでした。
今年のこととは言えやはり記憶が薄まってきているな。。
よし、思い出せるうちに書きとどめておこうと思います。
なぜ退職を決めたのか。
そもそも役所で建築職員は何をやっているのか。
そして公務員を辞めるとどうなるのか。
第1回 役所で、建築職員は何をやっているのか?
今日はさわりとして、ここから。
私は2014年4月に、人口日本一の政令指定都市に技術職員として入庁しました。
大学院で都市計画・まちづくりを専攻していた私は、建築専門の技術職員を選択。
有り体に言えば、”大学で学んだことを公共に還元したかった”のです。
ここで基礎的な情報ですが、役所で建築系の技術職員といえば3つの職域に分かれます。
もちろん、その自治体が市町村レベルの基礎自治体か、それとも都道府県レベルの広域自治体かどうかということや、建築主事を置く特定行政庁なのかどうかということも関わってきますので、一概なことは言えません。
今回挙げる例は、神奈川県のとある政令指定都市(もちろん特定行政庁)を想定しています。
特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)は、建築主事を置く地方公共団体、およびその長のこと。建築の確認申請、違反建築物に対する是正命令等の建築行政全般を司る行政機関。 建築基準法第二条第三十五号に規定されている。
(wikipediaより)
①建築行政を司る職域(建築行政)
これから工事されようとしている建築物が、果たして適法かどうかを審査する業務です。
建築という行為はもちろん個人的なものですが、各々が敷地に好き勝手な建築物を作っていては秩序ある街が形成されないことから、法律に基づくルールに則って立てられる必要があります。
具体的には、建築確認申請(建築基準法)や開発許可(都市計画法)などが代表的で、総じて法律を司る番人としてのお仕事と言えます。
役所においては新人職員の登竜門と位置付けられ、ここで洗礼を受けることで、法解釈に関する専門性を向上させることとなります。
実際、一年目の半数近くがこの部門への配属でした。
②自ら都市整備をコーディネートする職域(都市整備)
※参考 高島二丁目地区第一種市街地再開発事業(横浜市HPより)
本来的には、住民から税金を集めて行う行政事業には、公平性や平等性が求められます。
当然ながらそれゆえに、投資の恩恵が限定されてしまう事業は難しい(「不公平だ!」となる)ものなのですが、都市のポテンシャルや課題解決の必要性を鑑みて、あえて全体ではなく”部分”に投資をする事業の一つが、都市整備事業だというわけです。
例えば、ターミナル駅の駅前などは人の流れも集積することから、土地利用を高度化すべきだという考え方があります。
床を増やして、商業など消費の舞台を増やすことが、ゆくゆくは公共に資することとなり、自治体経営という意味でも望ましい姿だと考えられているのです。
しかし実際多くの都市において、駅前に老朽建物が密集しているなど、本来的な土地利用がされていない、という状態になっています。
この状態を”土地の低未利用”と呼び、行政がテコ入れすることが共同建て替えや再開発事業を行い、高度化が試みられることとなるのです。
※参考記事
都市整備の別パターンとして、課題を抱えた市街地の解決ということもあります。
共同建て替えや再開発事業が、”プラスを倍増させる”動きだとすれば、こちらは”マイナスを縮める”動きと言えるでしょう。
この最たるものが密集市街地の問題で、以前のエントリにて取り上げたこともありました。
このように、都市のポテンシャルを活かしたり、課題解決のために特定地区に行政介入を行うことこそ、行政の都市整備業務です。
実務は権利者との息の長い調整や、行政内部の調整など、地道かつ長期間の仕事です。
さらに言えばこの分野は、業務のうち一定の割合が外注化されていることも特徴です。
都市計画のコンサルタントや開発事業者に業務委託を行うことで専門的作業はそちらに任せ、行政担当者は取捨選択や判断・決定をしていくことが仕事となります。
③行政組織が保有する施設のお守りを行う(建築営繕)
3つ目は比較的わかりやすいものです。
市役所や公民館、学校や公営住宅など、行政は本当に多くの建築物を保有しています。
それらを新設することも大事ですが、もちろん作って終わりではありません。
例えばタイル仕上げは経年劣化による剥落が懸念されますし、エレベーターなどの昇降機設備は定期的なメンテナンスを欠かせることができません。
ゆえに内外装や設備など、それぞれに適した周期で改修や更新を行う必要があり、工事を発注する必要が生じるのです。
実務の流れとしては、工事の内容を設計し、図面や仕様書、内訳書等からなる設計図書を作成します。
その工事情報が公告され、入札となります。
開札後、適正な有資格者が落札していれば、工事請負契約が締結されます。
そこからは、請負人が本当に設計図通りに仕上げるどうかを監督(監視)する業務。
各種施工計画書や施工図面を承認し、日々動く現場を監視し、無事かつ安全に完成されることを見届けるという。
これを営繕業務と呼びます。
ちなみに私が行政で経験したのはこの分野で、先日のエントリでそれに関連したことを書いたりもしました。
以上、そんな3分野に分けることができます。
この分類はあくまで我流のものなので、こちらもご参照ください。
http://www.city.yokohama.lg.jp/jinji/setsumeikai/semina/pdf/h26/kozima.pdf
さて次回は、なぜ退職するという決断に至ったのか。
そのへんを思い出せる範囲で書いてみようと思います。