no pleasure, no life(旧ブログ名:まちづくり、例えばこんなふうに)

意固地になるほどに"まちづくり"が気になって仕方ない。自分の関わったまちづくりの活動・調査の記録を中心にしつつ、"都市""街の変化"の話題など。 Keyword→まちづくり/都市計画/荒川区町屋/蒲郡/豊橋/三河/谷中

【聴講後】まち普請事業の意義など。

前回エントリにて紹介した、ヨコハマ市民まち普請事業。

その公開二次コンテストにお邪魔してきました。

 

 

 

まち普請事業公開二次コンテストへ行ってみた

 

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桜木町駅からほど近くの横浜市市民活動支援センターが会場。

建物は横浜市資源循環局が保有するクリーンセンタービルで、こちらの4・5階に入居している形です。

工事的には、確か南本牧最終処分場に産廃を出すときの手続きをする場所だった。。。はず

 

仕事が片付いておらず途中で抜けざるを得なかったのですが、午前中の各提案グループのプレゼンはほぼ全て見ることができました。

 

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当日の雰囲気をお伝えするためにプレゼンの様子を。

どこのグループも、提案内容に関わったメンバーをずらりと並べ、小学生にセリフを与えたり、揃いのユニフォームを用意してたり、地元で合意形成に取り組んだ成果としてのアンケート結果や寄せ書きを掲げたりと、必死のPRが印象的でした。

 

今回は特に、コミュニティスペースという言葉に代表されるような、ハコとしての交流拠点の整備提案が多かったように思います。

地区住民・来街者の交流の場所を軸に、歴史や農作業といった地区ごとのスパイスがありましたが、一定の傾向はあった印象です。

 

 

 そして結果がこちら。

一件につき最大500万円の助成金があるのですが、それが三件ということなので計1500万円弱の公金が動いたことになります。

 

助成対象に決定したグループ関係者の、喜びのツイート。

メインでプレゼンをされてた方だったので、喜びもひとしおと思います。

おめでとうございます。

 

こちらも同じグループの関係者の方でしょうかね。

 

 

意義とか

 

聴講して改めて、まち普請事業の意義が見えた気がしています。

それは12年間通じて使われている、こちらのフレーズ。

 

「私たちのまちを 私たちでつくる

きっとまちが好きになる」

 

これは、まち普請コンテストを通じて実現した成果に対する愛着だけを意味するものではありません。

まち普請事業コンテストへの参加のためには、前述のように住み手自身が汗をかくことが求められます。

土地なり建物なりを仕入れて、合意形成して、プランを作成して。

それが結実して、コンテスト内のプレゼンに現れていたような"地域の総意"が演出されます。

 

そのプロセスを通じて、"地域"が作られていくように見えるのです。

それまではなかった、地縁の仲間とか、コミュニティといったもの。

そういうものを作り出したこと自体への誇り高さや、仲間への愛情なんかが、結果として地域への愛着に変わるのだろうと思います。

 

ハード整備のコンテストを通じて、目には見えない地域の絆のようなものが生まれる。

これはすごいことですよ。

 

 

住宅街か商業地かを問わず、都会に住む人々にとって、"地域"を感じることはきわめて困難です。

そこには、転勤などに伴う居住流動性の高さや、町会など既存コミュニティの持つ壁などが要因としてあるわけですが、そこの議論は今回はしません。

 

もちろん、若年層にとっても"俺の街すごいぜ"というような概念はあるわけですが、都道府県ランキングと同じ感覚で、利便性や名所など、外に自慢できるかどうかという点が基準です。

実際、ブランド路線沿線に住んでいることや、主要駅へのアクセス性、大型スーパーがあるかどうか、といった記号みたいな利便性をもってしか街を評価することはありません。

 

「吉祥寺に住む」「自由が丘に住む」ということのステータスに近いものがあります。

もちろんどちらの街も魅力的なんですが。

 

でも、人とのつながりというところから来る街の魅力は、感じることが難しいのです。

そのためには、街の飲み屋に行くとか、町会や商店街みたいな地域性の高いものに手を出すとか、話しかけるとか、勇気を出して一歩二歩、時には何十歩も踏み出さねば、そういう意味での地域を味わうことはできません。

しかしそんなことをするインセンティブはないのです。

行動範囲が広い彼らにとって、リスクを取ってまで地縁的な付き合いをする必要はないのです。

 

まち普請では

 

まち普請事業では、整備提案を通じて新たな地縁的グループが作られているパターンが多かったように思います。

町内会や商店会はもちろんあるのですが、それらとは別のグループが。

 

まちで、包括的なテーマで自治活動を行う団体としてはまず第一に町内会なのですが、近年の加入率低下に伴って、高齢者のクラブ化や存続上の問題など、疲弊が指摘されます。

商店会も同様に加入率は低下しているほか、そもそも個店が逆境にあります。

 

そんな中で、新しいグループが地域で合意形成を図ろうとするとき、既存の地域団体である町内会や商店会とチャンネルを持たざるをえません。

その時、地域に新しい風が吹き込まれるのです。

 

 

提案したどの団体も、高齢者ばかりでもなく、ママばかりでもありませんでした。

特定の属性を持つクラスタばかりということはありませんでした。

それが、地域なのだと感じました。