3月26日開館の荒川区荒川二丁目複合施設「ゆいの森あらかわ」のおさらいと活用に向けた野望と。
満を持して開館した、「ゆいの森あらかわ」。
悲しいかな、拙ブログの中で最もアクセス数を稼いでいるのが「ゆいの森あらかわ」に関する記事のようで、最後にもう一回だけ恩恵にあやからんと書いてみます。
なお、開館の様子は見れてませんので、その点を差し引いてお読みいただけると。
【写真】開館3週間前の「ゆいの森」
3月26日現在、既に開館されてるわけですが、開館三週間前に付近をグルグルしてみた時の写真を掲載。
開館日である本日はあいにくの天気ですが、この日はとても温かかった。
会館が間近であることを示すのぼり。
これは町屋駅近くの三菱ビルテクノサービス本社敷地外周部分ですが、荒川中央通り一帯や商店街など広い範囲でのぼりが出されていました。
北側から。
1月末で竣工はしているものの、コーンバーによって立ち入りがまだ制限された状態のゆいの森。
近付くとかなりのインパクトで、さすが敷地約4,100㎡(約1,240坪)に延床約11,000㎡の巨大建築物だということが実感されます。
木造密集市街地である周辺環境から見れば不釣り合いな印象は否めないのですが、現在事業中の都市計画道路補助90号線完成の暁には、その違和感も少しは緩和されるのでしょう。
出来上がって設置されたサインが、まだ養生されています。
こうしてみると、やはりロゴマーク良いですね。可愛い。
選定の様子はあまり説明されてないのですが、こちらの女流舞踊家の方は携わられたとのことです。
開館セレモニーにも出席されるということです。お美しい。。
【ゆいの森あらかわ】本日、荒川区に新たな名所が誕生日します。数年前より【ゆいの森】の名称と、ロゴマークの選定にて携わらせて頂いたご縁で、会館記念式典に出席させて頂きました。オープンは、本日3月26日10時です!荒川区へお立ち寄りの際は、是非とも足をお運び下さい(*^^*) https://t.co/UPcCLJkueq
— 藤川 澄十郎@3/26にっぽり春祭り (@yuu_sumijuro) 2017年3月25日
東側から。
このガラス面には、カフェ「カフェドクリエプラス」が入居されているはず。
館内の本が持ち込み可能ということらしく、往来を眺めながらの読書は気持ち良さそうですね。
あれ、待てよ。。よく考えると書籍の持ち込みができないカフェってあるのか?(他に知らない)
きっと貸出し手続き前の本まで持ち込めるんだろうな。。でもそうするとBDSとの位置関係が難しいところだな。。。
また、左下に見えるまだ工事中の部分がありますが、こちらは平成29年度中に防災広場になりそうです。
施設と一体的な利用ができそうですが、無秩序な駐輪場になってしまわないかが危惧されますね。
(「施設内部の完成予想図」より)
融合された三機能
さて、この「ゆいの森あらかわ」とは一体何なのかということ。
以前のエントリでも説明していますが、開館を機に改めて。
荒川二丁目複合施設「ゆいの森あらかわ」とは、「区立図書館」「文学記念館」「子ども施設」の三機能を複合させた大規模施設です。
木造密集地域に、いかに約4,100㎡もの敷地を確保できたのかと言えば、都営住宅跡地が活用されているからですね。
(住宅市街地整備推進協議会資料より)
①荒川区中央図書館
区内最古の図書館であった荒川図書館が老朽化と接道不良を背景にその役目を終え、それに代わる図書館機能を確保するというのが「ゆいの森」の主な目的の1つとなります。
ちなみに、役目を終えた荒川図書館跡地は、防災広場として公園化する取り組みが進められています。
(閉館された荒川図書館)
これに伴い、これまでは南千住図書館が担っていた中央図書館機能を、今回の「ゆいの森」内の図書館に移すということがなされています。
同時に図書館システムの更新やホームページリニューアルも実施されており、区民にとってかなり使い勝手が良くなったのではないでしょうかね。
www.library.city.arakawa.tokyo.jp
https://www.yuinomori.city.arakawa.tokyo.jp/index.html?cookie=check
区の中央図書館と位置づけられる図書館は、約60万冊の蔵書や約800席の座席を備え、新たな発見と読書の楽しみを提供します。
(ゆいの森あらかわ公式サイトより)
②吉村昭記念文学館
そしてもう1つの目玉、吉村昭文学記念館。
歴史小説やノンフィクション作家として活躍した、荒川区東日暮里(当時は北豊島郡日暮里町)出身の作家である吉村昭氏(1927-2006)に触れる施設です。
荒川区出身で「戦艦武蔵」や「三陸海岸大津波」、「ポーツマスの旗」などで著名な作家・吉村昭氏を記念する吉村昭記念文学館では、郷土愛の醸成や文学に親しむきっかけを提供します。
(ゆいの森あらかわ公式サイトより)
本、特に物語を極端に読まない私は恥ずかしながらこの方も存じ上げません。。
吉村昭氏の全作品を展示したエントランスと、在りし日の書斎の再現が目玉の様子です。
施設としては以上ですが、これらを舞台として、企画展やイベントが実施されるようです。
まずは開館企画として、「映像化された吉村作品の世界」をテーマに企画展が始まっています。
https://www.yuinomori.city.arakawa.tokyo.jp/viewer/info.html?id=767
これを機に、吉村昭作品に触れてみましようかね。
③子どもひろば
荒川区が総合計画等で推進するスローガン「幸福実感都市あらかわ」 を実現のための施策の一つ「子育て教育都市」における目玉です。
この機能は、施設としては一か所に集中しているわけではなく、例えば図書館機能の中に「絵本館・おはなしの部屋」や「児童書コーナー」があるほか、単体の機能としても「遊びラウンジ」「託児室」「体験エリア」といった施設が館内に設置されています。
大きく分けると、親目線の育児支援向けと、子供目線の学び・体験支援があるような印象です。
(遊びラウンジ、えほん館、ベビーステーション。いずれも荒川区Facebookページより)
「ゆいの森あらかわ」をコミュニティ拠点として活用するための野心など
コミュニティ拠点たりうるか?
以上が、「ゆいの森あらかわ」に関する情報です。
大規模な予算が使われた施設、区民の皆様にとってとても便利なものとなることは間違いないのではないかと思います。
しかし、です。
荒川区長はこう謳っています。
(荒川区報2017年02月24日号(ゆいの森あらかわ特集号より)
ゆいの森あらかわが、区の文化とコミュニティづくりの新たな拠点として長く愛される施設となるよう、ご協力をお願いします。
(抜粋)
揚げ足取りのようで恐縮ですが。
素晴らしい文化の拠点には、なることでしょう。
しかし、果たしてコミュニティづくりの拠点となることができるのかについては、現在開示されている情報のみでは期待することは難しいものがあります。
ハコとして、設備としての魅力の上に、魅力あるコンテンツや仕組みといったソフト面の仕掛けや、区役所内に収まらない様々な主体との連携が重要となります。
コミュニティ拠点のイメージ
ここで、"コミュニティの拠点"というものに関するイメージを説明したいと思います。
もちろん区の考えているイメージと異なることも考えられるので、一個人のイメージであることは強調しておかないと。
それは、「既存住民と新規住民が、荒川区をテーマに結びつく」ということです。
荒川区に限らず都内のどこでも、地域に根を張った既存住民と、住処を転々とする新規住民(やや年少、居住期間短め)の間に壁が存在することが指摘されます。
これは問題とまでは言い切れませんが、課題であるとは言えます。
例えばお祭りの担い手不足、傍若無人に振る舞う若年と締め付ける大家さん、災害時などに危惧される共助の担い手不足といった現象の多くは、地縁的なコミュニケーションの不足により起こるものではないでしょうか。
この間のカベの除去は、様々な課題解決につながりうるのですが、実際にこの領域に効果的に切り込めている地域は数えるほどしかないのが現状です。
例えば文京区本郷を拠点に活動する街ing本郷が進める「本郷書生生活」やワテラス(淡路町エリアマネジメント)の案内するスチューデントハウスはいずれもスキームが似ていますが、余所者である学生を積極的に地域の担い手として受け入れようとするもので、とても面白い試みです。
こうした混ざり合いの仕組みを、荒川区単位の範囲で考えるとなると、なかなか事情が異なるところもあるのですが。
「ゆいの森あらかわ」を徹底的に活用する
というわけで、景観まちづくり塾からの流れではありますが、荒川区のコミュニティ拠点として「ゆいの森あらかわ」を徹底的に活用するために、まずは学び合いの場づくりを考えています。
読書会や学び合いは、何も共通点を持たない人同士を集めるネタとして、そしてコミュニケーションのきっかけとしてかなり有効だという考え方から、まずはここがスタートになるのではないかと考えたのです。
一緒に議論している区民の方々がとても意識高く活発なので、行政と住民の対立を煽るラディカルな提案とならないよう最新の注意を払いながら、このプロジェクトを進めていきたいと思います。
興味のある方は、ぜひご一緒にやりましょう。