【マツリズム】小浜紋付祭に見る、祭りと地域とのカンケイ
今日は久々にマツリズムのお話です。
最近はお祭りとしてはオフシーズンですが、その間もマツリズムとしては活動が行われています。
ちなみにマツリズムとは、地域のお祭りへの参加を仲介することで新たな娯楽・つながりを生み、社会課題の解決につなげようとする一般社団法人です。
Ma-tourismから祭ismへ
マツリズムの主要な活動は地域のお祭りとヨソ者をつなげることで、その活動こそがマツリズム(「祭」+「ツーリズム」→Ma-tourism)でした。
しかし、それは一般社団法人マツリズムの、観光事業としての一側面に過ぎません。
現在進められているのは、より大きな概念としてのマツリズム(「祭」+「主義」→祭ism)を模索する試みです。
地域のお祭りが抱える課題にしっかりと向き合い、その解決に向けてマツリズムは何ができるのか?ということを深めるための議論「祭りかいぎ」をしているのです。
祭りかいぎでの発見
(Facebookイベントページより)
祭りかいぎのテーマは最初、「あなたにとって、お祭りとは?」という広いものでした。
そしてここで面白い発見をしたのです。
祭りというものの捉え方が、二つに大きく分かれることに。
よく、「祭りは非日常」という表現がなされると思います。
ですが、これは祭りの一側面でしかなく、どちらかといえば"参加者"の視点のもの。
マツリズムにおける参加者や、パフォーマンス系のお祭りの出演者はこれにあたるでしょう。
マツリズムは祭りの"参加者"と"担い手"をつなぐ試みであるがゆえに、祭りかいぎにもその両者が参加しています。
そして、一方の"担い手"にとっては、祭りはというものはどこまで行っても日常であるということ。
この理由は多くありますが、代表的なものをあげれば、"当日だけが祭りではなく、前日までの段取りこそが肝"ということです。
祭りの担い手の筆頭となるのは町会青年部や氏子会など様々ですが、稽古による伝統芸能の継承、必要物資や必要人員の配置、関係各所との調整など、お祭り当日に向けてやることは山ほどあります。
そしてそうした準備は毎年繰り返されるだけに、"参加者"とは異なるお祭り感を持っているのです。
(当日のワークショップより)
ここで言いたいのは、だから"参加者"は無責任だとかいうことではなく、お祭りを執り行う上ではどちらも必要なのです。
リーダーだけでなく、フォロワーがいてこそ物事は動きます。
ですが、"担い手"と"参加者"の別によってお祭りの捉え方が異なるということは、単純に面白い発見でした。
ちなみにこの時の内容については、代表である大原さんのブログでも紹介されています。
このような、筋書きを設けず、出席者同士のディスカッションやワークショップによってお祭りについて考える試みが、"祭りかいぎ"なのですね。
小浜紋付祭の受難
直近の、4月23日にも祭りかいぎが開催されました。
今回のテーマは具体のケーススタディで、存続の危機を迎えるお祭りに、いかに人を呼び、継続性をもたらすかということてした。
(当日の様子より)
今回はゲストスピーカーをお招きし、話題提供が行われました。
いらっしゃったのは、福島県二本松市の小浜地区で「紋付祭」というお祭りを担うZさん。
普段は市役所に勤務されているのですが、その傍ら、紋付祭新町(にいまち)地区の若連(18-39歳の男衆で、お祭りの中心的な担い手)として、存続を危惧し様々なアクションを起こされています。
小浜紋付祭については、こちらから。
紋付祭の担い手である”若連”は、18歳から39歳までの男性に限られています。
もちろん40歳を超えた方々や女性もお祭りと無関係ではありませんが、どちらかといえばお手伝いという位置づけとなります。
お祭りの中心的な役割である、太鼓台(いわゆる山車)を曳いたり笛を吹いたり神輿を担いだりといったことは、若連が担うということが伝統となっています。
しかし、日本全国共通の傾向として、伝統的な慣習がまかりならなくなる事情が発生しています。
それは少子化や過疎化、若者の地域離れ。
様々な要因により、若連の成り手は減少していくのです。
そしてとうとう、紋付祭を実施している4地区の一つである「新町(にいまち)地区」では、今後2、3年以内には祭の催行に必要な最低限の若連が確保できなくなってしまうことが濃厚となりました。
この事態に対しては、参加の門戸を拡げるという方向での対応が検討されています。
具体的には、"担い手"である若連の正会員の要件は変えないものの、あくまで"参加者"である祭典協力者を募ることとなりました。
祭典協力者とは、例えば新町地区に直接は縁がなくても、隣接する福島市や郡山市の大学生や、マツリズムを通じて参加する若者など。
地域に興味を持って参加してくれる人間を、お祭りとしてきちんと受け入れる体制を作っていこうとしているのです。
この場合、受け入れる際に必要となる諸事項(食事・宿泊場所・費用など)が課題となるのは当然ですが、それ以前に”祭典協力者を安定的に確保できるるのか?”ということが肝要となります。
要は、人が来てくれるのか?ということです。
ここからは、"参加者"と"担い手"を結ぶマツリズム、その事業としての課題につながります。
特定のお祭りに、いかに魅力を感じてもらい、さらに"参加してみようかな"という気持ちになってもらうかということなのです。
祭りかいぎの場では、そんな話題提供を受けて、ざっくばらんに質問・意見交換が終わりました。
そして、一つのことが見えてきたのです。
顔の見える場こそ
それは、この"顔の見える場"こそが鍵なのではないかということです。
どういうことでしょうか。
遠隔地のお祭りに魅力を感じてもらうためには様々な方法がありますが、まずはポスターや映像など、第一印象によるものがあるでしょう。
あ、かっこいいなと思ってもらう。
優れた映像としては、愛知県豊橋市の手筒花火にまつわるもの(以下)や、
TEZUTSU -fire flower town- from Tatsuya Ino on Vimeo.
墨田区の高木神社例大祭に密着してマツリズムで製作したもの(以下)などがあります。
いずれも、それぞれのお祭りが持つかっこよさに加えて、そのかっこよさを構成する一人一人のパーソナリティにも焦点が当てられており、"あ、いいな"とモチベーションを高めるのに十分な質を持っていると考えられます。
もしかしたらこの時点で、そのお祭りに参加する門戸が開かれており、距離・費用面のハードルが一定のレベル以下であったとしたら、参加してしまうかもしれません。
ただ、ハードルがそのレベルを上回ってしまったとしたら?
"魅力的だけど、さすがに遠いな。。。""ちょっと高いな。。。"
と、参加をためらい、こうなることでしょう。
"ま、今回はやめておくか"と。
そのためには、モチベーションを上げるか、参加のハードルを下げること。
やや前振りが長くなりましたが、そのためにこそ、こうした対話の場が有効ではないかと考えられるのです。
対話から人間関係が始まる
顔の見える場で、お祭りの当事者から悩みを打ち明けられ、親身になって会話をすること。
その時点で、その場には既にお祭りや地域への愛着が生まれ始めていると言えます。
出席者は手帳を開き始め、今年のお祭り日程の空きを確認し始めていました。
対話をして距離を縮めることで、人間関係が作られ始めます。
その人間関係が、遠隔地のお祭りへ参加するハードルを下げ、個々人のモチベーションを上げる効果があるように感じるのです。
今回はマツリズムの試みの紹介でした。
興味を持たれた方は、ホームページやFacebookページでチェックをしてみてください。