防災と景観の折り合いとは? - 「町屋銀座まちづくり?第11回」
昨日に引き続き荒川区のお話です。
荒川区は区域の大半が密集市街地であるがゆえ、区政のかなり上位のテーマに”防災”が位置付けられています。
防災がテーマのまちづくりは、先日紹介した密集事業をはじめ、行政が地区介入することで災害に強いまちを作っていくパターンとなります。
密集した市街地の防災性能を根本的に向上させようと思うと、住民の自助努力ではやはり限界があります。
そのため、防災まちづくりのアプローチの多くは、あらかじめハード整備やそれによる市街地性能の数値的向上ありきのもので、ともすれば”防災”の旗印のもとで街に大きな変化が起こってしまい、住民の方々が置いてけぼりになってしまう危険性すらあります。
そんな中、荒川区が力を入れているもう一つのまちづくりこそが、”景観まちづくり”というわけです。
防災まちづくりがトップダウンのものだとすれば、景観まちづくりは間違いなく住民からのボトムアップ的動きが期待されています。
公共を担うのは行政だけでなく、住民によっても担えるという”新しい公共”の試みの一つとも言えるでしょう。
その象徴が、「荒川区景観まちづくり推進委員会」という住民協議体の存在です。
この委員会では、以下の活動を進めています。
(1)景観まちづくりに関するシンポジウム等の開催
(2)景観ニュースの発行等による情報発信
(3)その他景観まちづくりに関連する事項の推進
景観まちづくりを進める住民のための、中間支援的な位置付けを担うのがこの委員会だと言えるでしょう。
最近の荒川区の景観まちづくりで特徴的なのは、”景観”と”防災”をつなげようとしている点にあります。
それは、「てくてくと」第5号の1面にて明確に語られているほか、現在開催中の荒川景観まちづくり塾にても掲げられている概念です。
そこで、「防災と景観」をテーマに「景観まちづくり塾」を開催いたします。慣れ親しんだ街の風景の中に溶け込み良い景観を造る防災対策、災害に強く、風景を愛でながら愛着の持てる街を作るにはどうしたらいいのかなど、「防災」と「景観」の両輪で進めるまちづくりについて、一緒に学び考えていきます。
しかし、単語や表現だけでこれら2つの親和性を見出すことは困難だと感じます。
防災を機能的な意味で捉えるならば、防災性の向上はすなわち機能の向上、イコール街への新しいものの導入ということを連想せざるを得ません。
そのようにして物質的に防災性を備えた市街地が、さて景観上の魅力はいかほどでしょうか。
頭や机上だけで考えると、こうなってしまいます。
だからこそ、次回以降の景観まちづくり塾では柔軟かつバイタリティー溢れる若年区民の方々の参加が待たれるのです。