平成29年度荒川区予算案を読むと「ゆいの森あらかわ」の情報が少しだけわかるという話。
平成29年度荒川区予算案が公開されました。
(荒川区HPより)
基本的に予算案は"案"でしかないので、区議会で議決されるまでは予算としての効力を持ちません。
極端な話、平成29年4月に入っても予算案が議決されていなければ、行政組織はお金使えないわけですね。。
さて、この予算案を読んでみると、なぜかヴェールに包まれてしまった「ゆいの森あらかわ」についての情報を少しだけ掴むことができます。
多彩なオープニングイベントがあるらしい
例えば、予算案リーフレットには、こんな情報が。
(荒川区HPより)
3月26日はまあ周知だと思うのですが、"オープニングイベント"とな。
"オープニングイベント"と言っても、イコール開館初日のイベントというわけでは多分なく、きっと"オープニングスタッフ"みたいな幅のある意図の"オープニング"だと推察されますが、やっぱり何か催されるということを知ってなぜか安堵しています。
東京藝術大学と連携した何かがあるらしい
続いて、予算案概要にはこんな情報も。
(荒川区HPより)
きたきた!大学とのコラボレーションはとても刺激的な気がします。
しかも、天下の藝大さんなわけですよ。
何をするかという点については、予算案の記述だけだとふわふわした印象。
”アートフェスティバル”も”ワークショップ”も罪のないワードですが、"産学連携"ばりに使い古されただけにもう少し情報が欲しい感は否めません。
ちなみに荒川区って、10年近く前に藝大との連携に関する合意書を交わしてるんですね。
東京藝術大学と芸術・文化振興のための連携に係る合意書を締結いたしました 荒川区公式ホームページ
運営初年度は1億7000万円が計上されてます
タイトル通り。
ちょっとこればかりは内訳を見ないとよくわからないのですが、直感的に大きな予算が充てられているなあという印象です。
記述されてる内容には目新しいものはなし。
その他
そのほか、予算案から気になるものを並べてみる。
日暮里区民事務所のリニューアル
区役所の出張所としての区民事務所は各地にあるのですが、日暮里繊維街にある日暮里区民事務所のリニューアルが行われようとしています。
なんと区民事務所としての機能だけでなく、繊維街をPRする拠点にもしてやろうというもの。
(荒川区HPより)
パースが秀逸なのです。
こんな感じ。
水着。。。?
荒川遊園リニューアル
23区唯一の区立遊園地である荒川遊園がリニューアルされます。
行ったことないですが。。。
建設通信新聞で記事にもなっていますね。
kensetsunewspickup.blogspot.jp
予算案からは、こんなところでしょうかね。
テレビ東京系「モヤモヤさまぁ〜ず2」の次回テーマが町屋周辺だそうで
荒川二丁目複合施設「ゆいの森あらかわ」が静かすぎる件について。
当ブログの中でも、最近PV数がじわじわと伸びてきている記事がこちら。
とうとう今年3月の開館まで間近となった、複合施設「ゆいの森のあらかわ」を紹介した記事です。
もちろん中立的な紹介ではなく、かなり穿った視点のものですが。
ゆいの森あらかわの開館予定日が決定しました 荒川区公式ホームページ
目次
あまりに静かすぎる「ゆいの森あらかわ」
さて、この「ゆいの森あらかわ」。
荒川区におけるかなりの目玉事業と言えるのにも関わらず、情報発信が静かすぎる気がしています。
非常勤保育士の募集や、カフェ事業者の発表といった事務的な広報はもちろん行われているのですが、盛り上がるような発表やイベントの告知などがないのです。
例えば、最新のニュースはこちら。
ゆいの森あらかわにおける自動販売機の設置事業者が決定しました 荒川区
ま、まあ、それも大事なのですけどねぇ。。。
豊島区新庁舎の事例
(豊島区HPより)
公共施設の開館に向けたPRの様子としては、平成27年5月にオープンした豊島区新庁舎などが堅実でうまい例かなと思います。
竣工から開館までの間に何回もの見学会を開いていたり、新庁舎に関する一般向けのレポートを発行していたり。
並行して、移転後のまちの賑わいを視野に入れたと思われるオープンカフェ社会実験を繰り返したりしています。
池袋駅東口グリーン大通りでオープンカフェ|豊島区公式ホームページ
(豊島区HPより)
豊橋市まちなか図書館(未了) の事例
(豊橋市HPより)
また、整備前ではありますが、豊橋市でこれから作られようとしているまちなか図書館に向けた動きも示唆に富みます。
例えば、まちなか図書館を考えるための地元NPOとの協同ワークショップ的イベントを行ったり、
(豊橋市HPより)
機運と期待を上げるためのシンポジウムを開いていたりします。
錚々たるメンツですよ。。
(豊橋市HPより ※動画です)
こちらのまちなか図書館整備推進室が、荒川区で言うところの複合施設準備室ですね。
これら事例と比べられるのも荒川区にとっては不本意でしょうが、やはり何か物足りない気がしてしまいませんか。
ひっそり、と表現するにはややインパクトの大きすぎるサイズのハコモノができていく。。
区政的には問題ないのでしょう。
わざわざ波風立てなくとも、事業計画通りのスケジュール通りで開館できればそれで成功、少なくとも業務執行とは言えるのです。
むしろ下手に大きな主張や挑戦をしないほうが、達成できなかった時の責任追及というリスクもなくて済むため、安全だとさえ言えます。
しかし、区民側はそうではないのでは。
投資額の大きな事業でありかつ、これまで庁舎しかなかった荒川区中央エリアに、とても存在感あるハコが作られるのだから、そこに期待しないわけにはいかないのではないでしょうか。
なぜそう思うか。
少なくとも私がご一緒している、荒川区景観まちづくり塾の受講生の方々はそうでした。
「ゆいの森あらかわ」について現時点でわかること
既に区から発表されている情報をまとめることにより、「ゆいの森あらかわ」についてもう少し深めてみたいと思います。
というわけで、区HPでわかる内容から、荒川二丁目複合施設に関するここまでの年表を作成してみました。
「ゆいの森あらかわ」「荒川二丁目複合施設」をキーワードに検索した結果を、時系列順に書き出したものです。
これでなんとなくの、当複合施設建設にかかる行政的な動きがつかめるのではないかと思います。
無機質な情報羅列。
まずは何より、「ゆいの森あらかわ」の整備に向けた動きは10年前である2007年から始まっていることに驚かされます。
複合施設の設置及び運営に関する懇談会
ノンフィクション作家である柳田邦男氏を座長に、議員や商工会議所関係者などを集めた懇談会が設置され、2010年3月に報告書が提出されました。
※行政の意思決定によく使われる方法なのですが、報告書を作成したのは懇談会名義であることに演出上なっていますが、もちろん、まさか柳田邦男氏ら懇談会側の発意で計画書が作成されたわけではありません。
子ども施設って何が入るの?
「ゆいの森あらかわ」に入居する三施設の一つですが、こちらだけは全貌を掴むことができていません。
公開情報などから判断するに、
といったあたり。
保育施設でない公共施設にここまでの機能があるのは、手厚い感じがしますね。
チェーンなお店が入ります
1階の幹線道路に面した部分にカフェスペースができるわけですが、カフェ事業者に決定したのがカフェドクリエであることも注目でしょうかね。
公共施設内のカフェということで、通常業態との違いが気になる。
評価項目の"施設との連携"とは。。?
(荒川区HPより)
そして、求人出てますよ。
ロゴマーク
なんだか可愛い。
(荒川区HPより)
都市計画道路補助第90号線
「ゆいの森あらかわ」のすぐ東で進められている都市計画道路事業について。
東京都が進める木密地域不燃化10年プロジェクトにおける特定整備路線として、平成32年までの整備が目指されています。
要は、防災性の向上を掲げた都市計画道路事業の加速化です。
外部向けに話された「ゆいの森」
どうやら、過去には「ゆいの森」のことを区長が外部向けに話すという場もあったようで、こんなものが検索でひっかかりました。
私の最近の好物である、地域ポータル「荒川102」でもやはり記事が組まれていましたね。
開館に向けて秒読みのこの段階で、わかる範囲の情報をまとめてみました。
区民や周辺にお住いの方々はパンフレットとか配布されてるのかな。
これから開館まで2月弱、何か刺激的な発表のあることを期待しつつ。
マツリズムのさらなる事業展開の話。
浅草橋に来てみました。
江東エリアは平地でかつグリッドパターンでいいなーと思ったら、浅草橋はまだ台東区でした。
"浅草橋"という橋は地図中右下の、神田川に架かる橋なんですね。
神田川にはたくさんの屋形船が停泊しておりました。
出番は夏ですよね。
今年は乗る機会あるでしょうか。。
の、何の変哲も無い雑居ビル風に来てみたのです。
馬喰町ファクトリー。
ここに、一般社団法人マツリズムの入居するシェアオフィスがあるのです。
マツリズムの法人化と今後
マツリズムは昨年11月末をもって一般社団法人となり、任意団体から法人となりました。
法人化を契機として、事業のさらなる本格化を志向されており、微力ながら何かお手伝いしたいと思っています。
今回は、そんな作戦会議のためにお邪魔したのです。
2017年は、事業を拡大する上で様々な協力を欲しています。
参加するお祭りの数を増やしていくことはもちろん、現在は代表である大原さんが単身全国を飛び回るという、実質的なワンマン体制なので、物理的な手が足りていないという状況もあります。
一方、大原さんがこれまで様々なお祭りを孤軍奮闘的に開拓してきたことで、蓄積されてきたマツリテーター(祭りとの繋ぎ手)ノウハウがあります。
今後はそのノウハウを拡げることで、マツリテーターを増やしていくとか。。?
そんな作戦会議の様子がこちら。
説明会(仮称)を開催します
そんな今後の事業のお話を、オープンな場で説明する場を予定しています。
一般社団法人マツリズムの事業や価値観、ミッションはどんなものなのか。
そして、どんな関わり方があるのか。
『マツリズムのこれからを語る会 vol.1』
日時 | 2月25日(土)13:00-15:00
費用 | 無料
詳細は以下のfacebookページから。
【聴講後】まち普請事業の意義など。
前回エントリにて紹介した、ヨコハマ市民まち普請事業。
その公開二次コンテストにお邪魔してきました。
まち普請事業公開二次コンテストへ行ってみた
建物は横浜市資源循環局が保有するクリーンセンタービルで、こちらの4・5階に入居している形です。
工事的には、確か南本牧最終処分場に産廃を出すときの手続きをする場所だった。。。はず
仕事が片付いておらず途中で抜けざるを得なかったのですが、午前中の各提案グループのプレゼンはほぼ全て見ることができました。
当日の雰囲気をお伝えするためにプレゼンの様子を。
どこのグループも、提案内容に関わったメンバーをずらりと並べ、小学生にセリフを与えたり、揃いのユニフォームを用意してたり、地元で合意形成に取り組んだ成果としてのアンケート結果や寄せ書きを掲げたりと、必死のPRが印象的でした。
今回は特に、コミュニティスペースという言葉に代表されるような、ハコとしての交流拠点の整備提案が多かったように思います。
地区住民・来街者の交流の場所を軸に、歴史や農作業といった地区ごとのスパイスがありましたが、一定の傾向はあった印象です。
そして結果がこちら。
一件につき最大500万円の助成金があるのですが、それが三件ということなので計1500万円弱の公金が動いたことになります。
助成対象に決定したグループ関係者の、喜びのツイート。
上星川の活性化に大きな一歩!
— あらーにょ (@ponpon6pack) 2017年1月29日
まち普請事業の審査が認められ私たちの事業に助成金の補助が受けられることになりました!
意外なことに、まさかの満票(笑)#上星川 #ヨコハマ市民まち普請 pic.twitter.com/wZcjJtj3v6
メインでプレゼンをされてた方だったので、喜びもひとしおと思います。
おめでとうございます。
こちらも同じグループの関係者の方でしょうかね。
かわいい後輩たちの応援と1300万円が動く瞬間目撃と集合写真のカメラマンしにヨコハマ市民まち普請事業二次コンテスト行ってきたぞい。FM上星川見事に当選おめでとうございます‼来年ゼミ楽しみだ。
— 本間拓実 (@tkm_0727) 2017年1月29日
意義とか
聴講して改めて、まち普請事業の意義が見えた気がしています。
それは12年間通じて使われている、こちらのフレーズ。
「私たちのまちを 私たちでつくる
きっとまちが好きになる」
これは、まち普請コンテストを通じて実現した成果に対する愛着だけを意味するものではありません。
まち普請事業コンテストへの参加のためには、前述のように住み手自身が汗をかくことが求められます。
土地なり建物なりを仕入れて、合意形成して、プランを作成して。
それが結実して、コンテスト内のプレゼンに現れていたような"地域の総意"が演出されます。
そのプロセスを通じて、"地域"が作られていくように見えるのです。
それまではなかった、地縁の仲間とか、コミュニティといったもの。
そういうものを作り出したこと自体への誇り高さや、仲間への愛情なんかが、結果として地域への愛着に変わるのだろうと思います。
ハード整備のコンテストを通じて、目には見えない地域の絆のようなものが生まれる。
これはすごいことですよ。
住宅街か商業地かを問わず、都会に住む人々にとって、"地域"を感じることはきわめて困難です。
そこには、転勤などに伴う居住流動性の高さや、町会など既存コミュニティの持つ壁などが要因としてあるわけですが、そこの議論は今回はしません。
もちろん、若年層にとっても"俺の街すごいぜ"というような概念はあるわけですが、都道府県ランキングと同じ感覚で、利便性や名所など、外に自慢できるかどうかという点が基準です。
実際、ブランド路線沿線に住んでいることや、主要駅へのアクセス性、大型スーパーがあるかどうか、といった記号みたいな利便性をもってしか街を評価することはありません。
「吉祥寺に住む」「自由が丘に住む」ということのステータスに近いものがあります。
もちろんどちらの街も魅力的なんですが。
でも、人とのつながりというところから来る街の魅力は、感じることが難しいのです。
そのためには、街の飲み屋に行くとか、町会や商店街みたいな地域性の高いものに手を出すとか、話しかけるとか、勇気を出して一歩二歩、時には何十歩も踏み出さねば、そういう意味での地域を味わうことはできません。
しかしそんなことをするインセンティブはないのです。
行動範囲が広い彼らにとって、リスクを取ってまで地縁的な付き合いをする必要はないのです。
まち普請では
まち普請事業では、整備提案を通じて新たな地縁的グループが作られているパターンが多かったように思います。
町内会や商店会はもちろんあるのですが、それらとは別のグループが。
まちで、包括的なテーマで自治活動を行う団体としてはまず第一に町内会なのですが、近年の加入率低下に伴って、高齢者のクラブ化や存続上の問題など、疲弊が指摘されます。
商店会も同様に加入率は低下しているほか、そもそも個店が逆境にあります。
そんな中で、新しいグループが地域で合意形成を図ろうとするとき、既存の地域団体である町内会や商店会とチャンネルを持たざるをえません。
その時、地域に新しい風が吹き込まれるのです。
提案したどの団体も、高齢者ばかりでもなく、ママばかりでもありませんでした。
特定の属性を持つクラスタばかりということはありませんでした。
それが、地域なのだと感じました。
まち普請事業の意義など。
今週末は。
「ヨコハマ市民まち普請事業」の公開二次コンテストが開催されます。
1 日 時 平成29年1月29日(日) 9:30から17:00まで(予定)
2 場 所 横浜市市民活動支援センター4階(中区桜木町1-1-56)
JR根岸線桜木町駅(北改札)徒歩4分/市営地下鉄桜木町駅 徒歩7分
3 プログラム
9:00 開場
9:30 開会、整備提案の発表
(昼休み)
13:30 公開選考
交流タイム
17:00 閉会(横浜市記者発表資料より)
行政介入型のまちづくりの中でも、ひときわ特殊。
事業開始から12年目を迎え、2015年には都市計画学会の石川賞を受賞したこの事業をご存知でしょうか?
まち普請事業とは?
横浜市 都市整備局 地域まちづくりの推進 ヨコハマ市民まち普請事業 ヨコハマ市民まち普請事業 トップ
「普請(ふしん)」とは聞き慣れない言葉ですが、安普請(やすぶしん)のような表現はたまに使うことがありますよね。
「普請(ふしん)」とは、「普く請う(あまねくこう)」とも読み、「力を合わせて作業に従事すること」という意味が含まれています。「公共」は行政によってのみ担われるものではなく、特に地域に根ざした身近な課題への対応などに市民のみなさんが主体的にかかわることで、参加する人や地域に暮らす人々の満足度を高めることにつながっていきます。「まち普請」には、市民に身近な「まち」に「普請」の輪を広げていきたいという願いが込められています。
(横浜市HPより、太字部筆者)
さて、では、まち普請とはどんな事業か。
簡潔に言うと、『身近な街のハード整備に関して、住民が行政の協力(お金+庁内協力体制)を勝ち取るためのコンテスト』です。
以下、この事業の流れと概要、特徴を掲載しますね。
(横浜市HPより)
■ 事業概要
●この事業は、横浜市地域まちづくり推進条例に基づく支援策のひとつとして、市民のみなさんから身近なまちの整備に関する提案を募集し、2段階にわたる公開コンテストで選考された提案に対し、最高500万円の整備助成金を交付するものです。
●この事業では、市民のみなさんが身近なまちの整備に関するアイデアを出し、共感する人を集め、議論、計画づくり、合意形成、整備、維持管理まですべて自分たちの手で取り組み、市はそれらを市民が主体となって実現できるようサポートを行います。
これは間違いなく、横浜市の都市整備分野、市民まちづくりにおける目玉だと感じます。
なぜか。
それは、"行政介入型市民まちづくりの進化系"と言えるからです。
まちづくり条例が生んだ行政介入型市民まちづくり
"行政介入型市民まちづくり"とは私の造語ですが、まずはこのニュアンスを説明したいと思います。
"まちづくり条例"というものが全国に数多あります。
これは建前上は、市民主体のまちづくり活動に対して、行政が認定するための手続きを定める条例です。
例えば、地縁に基づいて集った住民団体があったとします。
彼ら彼女らがまちづくり活動をしたところで、あくまでそれは民民で相互扶助行為をしているにすぎず、その時点では行政とは関係を持ち得ません。
しかし、時には手段として、道路整備や法制度的なブレイクスルーなど、行政の協力が必要になる場合があるでしょう。
そんな時、たとえ真っ向から「行政はこの道路を整備するべきだ」と主張したところで、以前述べたような理由で、行政がすぐに対応するということはありません。
この時点での、任意団体としての住民の声は一陳情や広聴に過ぎず、公式な意味で行政に声を届けることはできないのです。
行政側にしても、公平性の観点から、そうした要望に逐一対応することが難しい事情があります。
しかしそのままでは、せっかく高まった住民まちづくりをフイにしてしまい、意識を殺してしまいかねません。
また、行政的には、まったく声の上がらない地域に対して施しのように介入していくよりは、声をあげてくれて、なおかつその後の継続的なまちづくりも期待できそうな地域に介入していくほうが、効果も高く、良いと考えます。
では、あらかじめそうした団体と行政の関係について一定の作法を定めることで、関係を明確化すればよいのではないか。
そこで、行政はそうしたまちづくり活動を行政が認定する手続きを条例として定めることで、市民と協働のまちづくりを表立って進めることを可能にしているのです。
一般的な流れはこんなイメージです。
- 地域で一定の割合の参加者が集まったグループが、行政に申請をすることで条例に位置付けられた"まちづくり団体"になる。→条例がなければ任意団体止まりだった
- この"まちづくり団体"は行政の支援要請や専門家(まちづくりコンサルタント)派遣を受けることができ、地域の合意形成を進めながら計画を作成する。→条例がなければ独力で進めるしかなかった
- そうして出来上がった計画は、所定の手続きを経ることで、条例に位置付けられた"市民まちづくりプラン"とされ、今後市長はこの"まちづくりプラン"に沿って行政事務を行うよう努めなければならなくなる→条例がなければ行政に届かなかった
こうして市民からのまちづくり提案は、行政の施策に一定程度反映されることが担保されることとなります。
ただ、こうした条例を作ったところで、まちのルール策定や特定事業の導入など、行政的な"オトシドコロ"を前提とした傀儡的まちづくりに活用されることが実際は多く、本来的な意味での市民発意のまちづくりと言えるのかというジレンマはあります。
地域が本当の意味で自主自立の形で、独力による(条例の定義する狭義の)まちづくりを進めることは難しいのが事実です。
それを逆手に取った行政は、行政発意であるまちづくりさえも、このまちづくり条例に基づくシステムに照らし合わせて、あたかも地元発意のまちづくりであるような演出をするようになるのです。
代表的なのが、行政がある地区に密集事業を導入したいのに、あくまで"防災性に危機感を持った地元組織からの提案を受けて行政が動き出した体にする"、というような。
この状態は、ある種の理想とも言える"意識ある市民が行政の協力を得ながら市民まちづくりを進めていく"という形から、"行政の進めたいまちづくりのために市民に協力してもらう"という形への変容を意味します。
ただ、そうしたまちづくりによって市民は損害を被るわけではなく、むしろ相対的には住環境は維持・保全されるため、この形は暫定的ながらベターな形と言えます。
ここに違和感を持つ要因は、"まちづくりは市民発意に基づき市民主体で進められるべきだ"という潔癖的な価値観なわけですが。。
横浜市はもう一歩進めている
話は戻り、では横浜市のまち普請事業がどのように画期的なのか。
横浜市も同様に、「横浜市地域まちづくり推進条例」というものを平成17年に制定しており、市民まちづくりの流れを定めています。
(横浜市HPより)
この条例そのものは、他の自治体におけるまちづくり条例と基本的に同じ構造です。
ただ、横浜市において光るのは、使えるメニューとしてのまち普請事業です。
それは、行政介入型まちづくりの中では特異なほど住民の自主性を要求している点です。
事業主体である横浜市が主張する、事業の特徴がこちら。
■ この事業の特徴
1 ソフト面(活動)の助成ではなく、ハード面(整備)の助成であること。
2 助成金の助成率を設定しない代わりに、市民に整備に要する費用、整備における労力又は整備した施設の維持管理などの負担などを求めていること。
3 多様化する市民ニーズに対応し、整備分野を限定していないこと。
4 1次コンテストを通過した提案グループに対し、行政との話し合いの場づくりや活動費用などを支援し、その上で2次コンテストを行うという2段階の選考システムとしていること。
5 コンテストでは、選考のプロセスすべてを公開し、公平性、透明性、公開性を確保していること。
これらに加えて、事業概要にあった「共感する人を集め、議論、計画づくり、合意形成、整備、維持管理まですべて自分たちの手で取り組む」という点が特徴です。
さて、引き続き独断と偏見全開で話してみましょう。笑
従来的な行政介入型まちづくりにおいては、市民まちづくりの手続きを定めたとしても、それは儀礼の域を超えないものでした。
これまでの行政にとっては、あくまで理想でしかない"熟議による合意形成"なんかよりは、まちのご意見番である町内会や商店会、PTAといった主体を計画づくりの現場に同席させるというわかりやすい演出こそが重要です。
防災性向上や住環境保全といったお題目を掲げ、ルールの策定やプランの作成といった、見える成果こそが重要なため、どちらかといえば市民協働というものはアリバイ的な性格が強いものでした。
そのためには、"地域みなさんの総意である"、ということにする手続きこそが大切。
確かに、市民協働とは美しい言葉ですが、実際は不確定要素ばかりで難しいもの。
ましてや反対意見を全て解決することなど至難の業。
不測の事態を何より嫌う行政組織にとって、丁寧に合意形成を進めていくことについて気が進まないのも仕方ありません。
こうして、市民まちづくりとは掛け声ばかりに形骸化していくのですが、横浜市ではもう一歩進めているのです。
それがまち普請。
まず、これに応募する市民団体は、地域の合意形成を住民主体で行うことが前提となります。
もちろんそれにあたって、市都市整備局地域まちづくり課がサポートにまわるわけですが、結果ありきで進めるこれまでのまちづくりとはやや異なります。
また、維持保守にかかる負担などは住民側が被るのです。
以上からこの事業は、行政介入型市民まちづくりにしては住民側の負担割合が高いのです。
"自分たちのまちは自分たちの手で"というのが市民まちづくりの理念であるとすれば、かなりその理念に近づいていると感じるのです。
もちろん、こうした事業が可能な要因に、基礎自治体として最大の人口を持つ横浜市の潤沢な歳入や注目度があるのでしょう。
ただ、それを差し引いてもあまりある事業であると感じます。
さて、今週末。
この事業により整備が実現された事例は、以下のページで紹介されています。
横浜市 都市整備局 地域まちづくりの推進 ヨコハマ市民まち普請事業 ヨコハマ市民まち普請事業 整備事例
そんな事業の公開コンテストが、今週末に。
市民まちづくりの最先端を、のぞいてみませんか。
音喜多駿という怪物。
とうとう、きた。
都議会会派「都民ファーストの会東京都議団」 が誕生し、なんと83年生まれの音喜多さんが幹事長に!
東京都も地方自治の一種ではありますが、やはり首都東京ですので報道は全国区。
ここまでの人になりましたか。。。
やはり同い年であり音喜多さんと友達である長坂さんも、このニュースを受けて熱い記事を書いています。
音喜多さんと長坂さんは、ここ10年近く自分の人生ツートップである。
長坂さんの記事にある、お二人の出会いの経緯に関する部分を引用します。
【音喜多駿という恩人】彼との出会いは22歳の11月、大学4年のときでした。豊橋の手筒花火を上げた駒場祭。8年前のこと。
東京で手筒花火を上げるためには、20人近い警備が必須でした。しかし、当時うちの学園祭委員の人数は30名ほど。一企画のために、委員の過半は避けませんでした。
僕は当時隆盛だったmixiで、助けを求めました。その日記を見た、時習⇒早稲田の先輩が、早稲田祭運営スタッフのMLに、その状況を投げてくれました。
そして同じ運営スタッフで、その先輩と仲良かったおときたが中心となり、当日、二十数名を引き連れて、駒場祭に乗り込んで来ました。揃いの早稲田祭運営スタッフの法被を着て。
早稲田祭の法被を来た人間が、統率の取れた動きで並び、東大で警備をしている姿は、異様で個人的にとても高まる光景でした。
お陰で事故なく、東京での手筒花火を終えることができました。彼がいなければ、企画は中止になっていました。
改めて、あのときは、本当にありがとう。
その音喜多が、都議選にチャレンジします。
だからと言って、彼に投票してほしい、という訳ではないですが、東京の方、北区の方、まずは投票に行って来てください。
そして候補者を見比べるとき、できれば彼も比較対象に入れてあげてください。
そしてそんな、音喜多さんを初め早稲田祭の運営スタッフの警備のお陰で東大駒場で手筒花火をあげることのできた一人が、何を隠そう私でした。
当時の私は東大生でも何でもなく、ただただ長坂さんに導かれるままに現場に行き、決められた打ち方を守っただけ。
でもそこでの経験は、当時精神的に追い詰められていた私に劇薬のように作用し、再受験を志すようになるのです。
そんな、きわめて個人的だけど生涯最大とも言えるライブイベントに居合わせた一人が、音喜多さんなのです。
思えば、彼の結婚のお知らせを知った時も感慨深くて一本書いてたな。
東大駒場キャンパスの(今はもうない)同窓会館で、学園祭のことも下ネタのことも、とにかく全てを嬉しそうに話す人。
「突き抜けた人」、という印象。
私が高校までの狭い世界を卒業して大海に出てから初めて出会った、怪物でした。
音喜多さん、ますますのご活躍を。