no pleasure, no life(旧ブログ名:まちづくり、例えばこんなふうに)

意固地になるほどに"まちづくり"が気になって仕方ない。自分の関わったまちづくりの活動・調査の記録を中心にしつつ、"都市""街の変化"の話題など。 Keyword→まちづくり/都市計画/荒川区町屋/蒲郡/豊橋/三河/谷中

実務としての都市計画 -「都市計画コンサルタントとは何者か 第1回」

8月1日付で、とある都市計画コンサルタント事務所に入社いたしました。

どうして前職を辞めたのか?という経緯はまた後に譲るとして、今回は「都市計画コンサルタントって何さ?」という話を書いてみようかなと思います。

都市計画コンサルタントの知名度ってどのくらいなんだろう。。。

 

さて、都市計画コンサルタント

 

コンサルタント」のほうは大丈夫ですよね。

課題を抱えるクライアント(顧客・発注者)がいて、その課題解決という知能労働を業務として受託する人たちです。

その”課題”のジャンルによって、経営コンサルタントとかITコンサルタントとかに分かれるわけです。

 

都市計画コンサルタントはどうした業務を受託するのかといえば、それはもう文字通り”都市計画”に関するものなのですが、これがたぶん伝わりづらい。

そもそも都市計画って何なのかと考えたとき、具体的な何かがイメージってできるんでしょうか。

 

こんなのとか思い浮かべます?

wikipediaより)

 

都市計画と言えば都市計画なのですが、どちらかといえば計画都市ですね。

きわめて建築的・設計主義的にデザインされた都市、ブラジリアです。

都市として世界文化遺産になってたのか。。。

 

さて、先に結論を述べると、いま現在の日本においてこんな規模の都市一つを、白紙(タブラ・ラーサ)に自由にデザインして作り上げるということはほとんどあり得ません。

都市を計画的に一から作るという意味での都市計画は、途上国はともかく日本においては存在しないわけです。

多摩ニュータウンとか高蔵寺ニュータウンとかは、高度成長期に都市計画家が作り上げたものではありますが。

東日本大震災後の自治体復興計画は、ある意味でそれに近いという解釈は可能

 

 

ではいまの日本、特に首都圏における都市計画の仕事とは何か。

それは、いまできている街を少しずつ改善していくということに尽きます。

 

そもそも街は、ある計画意図をもって作られたのでしょうか。

ニュータウンや計画都市ならいざ知らず、多くの街はそれまでの時代の特徴ある文脈が、地層的・年輪的に重なった結果の状態です。

東京の都市形成の上でも、いくつかのターニングポイントがありました。

徳川家康の江戸入府以前の農村というレイヤー、
その後の計画的城下町としての江戸というレイヤー、
明治に入ってからの東京市区改正、関東大震災後の復興区画整理、戦災復興の区画整理というレイヤー、
高度成長期に急速にインフラ整備による道路ネットワーク
などの重なりとして現在の東京があります。

 

その時点その時点で時代に応じた意図をもって都市形成が行われたものの、一部計画に沿わない開発行為や集団移住の結果、都市課題として残っているところがいくつかあります。

例えば東京23区では、

老朽建物が密集しすぎて防災上危険なエリアとか、
もともと歴史的に風情があるのに、虫食い的な建て替え(○ーベルハウス化)で魅力を失い、陳腐化しつつあるエリアとか、
駅前なのに利便性の低いエリアとか、

街によって課題を抱えるところが多くあるわけです。

 

地震時等において大規模な火災の可能性があり重点的に改善すべき密集市街地は、東京都が2,239ヘクタール、大阪府が2,295ヘクタールである。

国土交通省より)

 

東京都建築士事務所協会文京支部より)

 

この”街”という切り分け方は本当に無数(街区〜町丁目〜自治体全域)だし、課題の種類も無数(防災、経済性、コミュニティ、保全、etc)。

 

こうした課題を解決する直接的な手法としては、建築基準法都市計画法に基づく規制・制度があります。

建築することができる建物のボリューム(敷地面積に対してどれだけ床面積を設けてよいか)や用途(住居、商業、事務所など)、より細かな形態等にも一定の制限を設けることで公共の福祉の実現を図る、要は良いまちにするわけです。

また、規制的な手法とは別に、公共施設(道路、学校、鉄道など)を作って積極的に都市計画を進めることもあります。

 

愛知県より)

 

一方で、日本においては土地は私有財産となっています。

民法上は所有財産をいかに処分するかは所有者の自由なのですが、土地や建物といった不動産に関しては周囲への影響力が強い、要は好き勝手な建築行為をされたら良い街にならないため、公共に基づく一定の制限が存在しているのです。

 

”閑静な住宅地”としてイメージするエリアには、おそらく【第1種低層住居専用地域】という用途規制が設けられています。

”寂れてしまった商店街”としてイメージするエリアには、まず間違いなく【近隣商業地域】という同様の用途規制が設けられています。

このあたりが、都市計画の規制的側面。 

 

もう一つ、よく反対運動に遭っているような道路事業(都市計画道路の整備)などは、都市計画の事業的側面となるわけです。

そのほかに、都市再開発法に基づく再開発事業や、法律に基づかない密集市街地整備事業なんてのも、事業により都市を改善していく手法となります。

 

再開発事業についてはこの間書いてますね。

phantom-gon.hatenadiary.com

 

法律や国の事業に基づくこうしたツールを駆使していかに良い街を作るかということを、行政の都市整備・都市計画部門の方々は仕事として取り組んでいるのです。 

このあたりが、都市計画の実務としての概要になります。

 

次回はその続きと、もう少し業務の流れを具体的に書いてみようと思います。