役所の工事監督業務について詳しめに書いてみた - 「なぜ役所を辞めたのか?第3回 営繕業務とは【後編・監督編】」
今日は第3回。
役所の営繕業務のうち、設計業務の後に発生する工事監督業務について書いてみます。
第1回、第2回はこちらからどうぞ。
工事請負契約
前回までに述べたような工事情報を入札情報として公告した後、適正な有資格者が落札したとします。
ここから、改めてその契約候補者の適正が審査され、問題がなければ工事請負契約の締結となります。
一体何が審査されるのかと言えば、建設業の許可状況であったり、雇用している技術者の資格状況や、兼任の工事の存在などです。
工事請負契約書は、工事入札時の設計図書一式に加えて、表紙と約款によって構成されます。
表紙はこんな感じ。
工事請負契約書の参考イメージ(全建総連HPより)
そして、約款はこんな感じです。
工事請負契約約款のイメージ(横浜市HPより)
約款とは、契約の履行にあたって両者が守るべき細かなルール一式をまとめたもので、自治体ごとに作られているようです。
契約日から何日以内に工程表を提出しなければいけない、とか、そんなことが定められています。
契約に至った後は、正式な請負人の代表者が担当課の窓口に赴き、ここでようやく初顔合わせ。
そこから、工事監督業務が始まることとなります。
え、工事監督って、、、現場に出るの??
工事監督≠現場監督
役所における工事監督とは、工事施工における現場監督とは全く意味が異なります。
工事現場に常駐する、請負人側の現場監督は、あくまで施工管理をするためのもの。
様々な工種の作業員さんのアタマとして、仕事を仕切ります。
こちらのほうはあくまで管理をする監督なので、"たけかん"と呼ばれます。
一方で役所で任命される工事監督は、公金を支払って実施される工事が、契約内容通り、品質面でも安全面でも無事に完成することを監督する立場です。
建築基準法上の"工事監理"にほぼ近く、そうであれば"さらかん"と表現する立場に近いですね。
「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること
(建築士法第2条より)
従って、工事請負契約を締結した後、役所側がまず最初にすることは、監督員を明示することです。
請負人に対して「この工事の監督員(担当職員)はAです。今後はAとやりとりを行ってくださいね。」と通知するわけです。
実際の監督員任命通知(横浜市工事監督事務取扱要綱より)
監督員の具体的な実務
さて、工事監督業務が始まりました。
契約直後は比較的動きが慌ただしくなる傾向にあり、
- 契約内容の読み合わせ
- 着手時書類の提出
- 工事の流れの説明
- 現場調査への同行
- 監督官庁(道路占有・道路使用関係ほか)との打ち合わせ
- 実施工程・施工計画書ほか施工書類の承認
という流れになります。
現場調査を踏まえて請負人さんは施工計画書の作成に入るので、資材搬入や仮囲いの設置といった実際の現場乗り込みは、契約後1ヶ月半後程度という傾向でした。
もちろん工事規模に応じて、事前調整だけで数ヶ月間ということもあり得ます。
ちなみに、施工計画書とはその名の通り、施工プロセスや安全管理の方法を明文化した計画書です。
コンクリート工事や鉄骨工事といった工種別に施工計画書が作られることもありますし、小規模な工事の場合は複数工種であっても総合施工計画書一本で済ませるということもあります。
工事監督の実務で重要なことは2つあったと感じます。
それは、「①マニュアルがない」ことと、「②基本的に書類仕事である」ことです。
現場が始まるとフリーダム化
「①マニュアルがない」だけに自由で、担当職員によって工事監督の具体的なやり方は様々です。
もちろん工事内容にもよりますが、極端にいえば。
足繁く現場に通って状況を目視する監督員もいれば、
工事中ほとんど現場に行くことのない監督員もいます。
監督実務の方法が分かれる大きな要因は、現場で監督員がすることがないからです。
当たり前ながら工事は"請け負われて"いるのであり、契約履行は請負人によって行われます。
仮設計画直後や墨出し・位置出し、解体範囲の確認など、現場で確認すべきフェーズはあるわけですが、そうした必要なタイミングに限って現場に行けばよいのであり、訪問頻度を上げることによるメリットはあまりありません。
作業員にプレッシャーをかけることが良い方向に出ればよいですが。。。
考えられる二つ目の要因として、安全の管理には際限がないからということもあります。
これは言わずもがなですが、実務となると難しいものです。
以上から、監督員が現場確認する頻度は自ずと少なくなります。
多くは、週1回程度の工程会議開催前後に現場を確認するくらいになるほか、小規模な工事では工程会議すら開かれません。
すると、「②基本的に書類仕事」となるのです。
前述した施工計画書や実施工程表、週間工程表や作業日報など、請負人から提出される書類を読み、承認する。決裁ですね。
これらを、担当監督員→主任監督員→総括監督員といった順序で回議し、決裁されたところで請負人に返却する。
このサイクルを続けていれば、乱暴な話、工事は進みます。
設計変更
工事が始まって現場が進むと、設計時に想定していなかった作業が必要になることもあります。
例えば改修工事において既存部分の解体を進めている際に、石綿(アスベスト)が見つかってしまった場合はどうでしょうか。
いろいろなことが考えられますが、この場合は石綿を除去する作業が必要になります。
契約時の設計図書にないのであれば、その除去作業を追加した契約内容に変更してやる必要が生じるわけです。
請負人にとっては工事全体の収支に関わる重要な設計変更なのですが、行政職員にとっては気軽なものではありません。
それは、予め確保した予算を超えたくないという事情ももちろんあるわけですが、なんと事務作業が面倒であるというトンデモ理由もあります。
設計変更を行う場合、設計業務に戻ってほぼ同じ作業をやり直す必要があるので、行政職員は尻込みしてしまうのです。
検査
一般的な事業所では、注文した物品が納品されたらすぐに代金を支払うのでしょう。
しかし役所では、納品から支払いの間に、「納品された物品は本当に契約内容の通りである」ことを確認する検査があります。
もちろん工事においても同様で、契約通りの内容が履行されたということを検査します。
具体的な工事検査には、書類検査と現場検査に分かれます。
書類検査では、工事中にやりとりされた書類や工事写真、完成図等をまとめた工事完成図書を確認します。
現場検査は言わずもがな、ですかね。
検査で無事に合格となれば、請負人さんはようやく工事代金を請求する権利が発生します。
まとめ
またしても冗長な文となってしまいましたが、ここで主張したいことは少ないです。
それは、工事監督はやりがいを感じにくい仕事であるということ。
よく、役所の仕事の中で営繕業務を、"実際に形になる、見える"仕事として評価する向きがあります。
しかし私はそうは思えませんでした。
工事するのは請負人さんです。請負人さんが建物や工作物を作ってくれるのです。
その完成物を見て、担当監督員に過ぎない自分が、"これは私がつくったものだ"という感覚を持つことは難しいです。
営繕部門の行政職員の使命とは、予め定めた発注スケジュールに沿って、予定通りの工事を進めることです。
ゆえにできるだけ工事契約期間以内で、突然の設計変更も発生させず。仕事も増やさず。
もちろん、設計内容に個人的な嗜好を挟んだりすることは可能なわけですが。
そして厄介なのが、監督員と現場代理人(請負人の代表者)の、決して対等ではない関係性です。
いや、本来的には対等なのです。
一つ目の要因は、現場代理人は担当監督員よりも遥かに年上の方が務めることが多いのですが、必要以上にペコペコしてしまうことです(もちろん気持ちはわかるのです)。
二つ目の要因として、担当監督員は大した専門的蓄積もないのに、承認一つで現場代理人を振り回すことができる立場にあることです。
あくまで役所のお金を使った工事であるのに、”いかに請負人に金額以上の働きをさせるか”という、お客であるような、傲慢でおかしな感覚を持ってしまいがちなのです。
これはあくまで個人的意見ですが。
そんな違和感の蓄積が、役所を辞めて転職したpush要因の一つです。
2017年の幕開けと願いと
無事に新しい年が明けましたね。
ありがとう2016年、2017年これからよろしく。
2016年→2017年のカウントダウンは、愛知県蒲郡市の生家近くの氏神様「竹谷神社」にて過ごしました。
ちなみに生家は既に売却されており、ありませんが。。
年明け直後の竹谷神社
年明け前に列に並び、氏子連の方々から絵馬とお菓子を受け取る。
そしてお参り。
祈願の内容は神様だけに伝わればいいのでしょうが、決意表明も込めてこちらでも。
絵馬の表面が独特な感触で書きにくかった。。。下手でお恥ずかしい
無病息災(定番)→30代も本格的に突入なので、より一層身体には気をつけねば。バドミントンクラブ入りますよ。
専門熟達(造語)→とにかく仕事に慣れる!というか慣れる以上に、専門性を増して自分の存在を目立たせるように。FPなど新たな資格にも挑んでいきますよ。デザイン系の技能も欲しい。
実践反復(造語)→頭でっかちから離れて、自ら動く人になるために。
もう本当に、一年間という単位が、体感としてどんどん短くなっている印象。
この現象はなぜでしょうか。なぜだろう。
それは、小・中学生の頃のような、新たな知識や世界との出会い、はたまた世界の広がりというものが、どんどん減ってきているからなのかなーと思います。
例えるなら、昔は新品のスポンジのような状態で多くを吸収できるような気持ちでいられたのが、年を経るに連れて余地が減ってきている状態に似ているのかなと。
しかし、それでよいものか。
それで気持ちが萎縮してしまったり「ああ、人生ってまあこんなもんだよな」という達観に至ってたまるものか。
それは精神の老化だと、思う。
2017年はこれまで以上に新たな出会いや挑戦に臆せず、歩みを止めずに邁進していく次第です。
"青臭い""大人になれない"という指摘は甘んじて受けましょう。
そっちのほうが自分は、面白い人生だと思うので。
役所の設計業務について詳しめに書いてみた - 「なぜ役所を辞めたのか?第2回 営繕業務とは【前半・設計編】」
前回のエントリでは、役所における建築系職員の職域を簡単にレビューしてみました。
役所には「建築行政」「都市整備」「建築営繕」の3つの職域があって、大まかな人数比では5:3:2くらいの感覚です。
営繕とは
まず、私が役所でどんな仕事に従事していたのかということ。
それは、3つの職域のうち三つ目に挙げた営繕業務でした。
営繕とは、「建築物の営造と修繕」のことをいい、建築物の新築、増築、改築、修繕、模様替等の工事を指します。
(国土交通省HPより)
以下に、実務の具体的な流れを説明してみます。
私は改修工事しか経験がないので、改修に限った場合としてご理解いただければ。
設計(狭義)
まずは工事図面を作成するところから。。。と思いきや、その前に計画を策定することが必要になります。
一般に、計画のフェーズには以下の4段階があると言われます。
①基本構想→②基本計画→③基本設計→④実施設計
このうち四つ目の④実施設計こそが実際の工事発注に使われるものなのですが、小規模な改修工事では最終段階の実施設計から始めることが少なくありません。
もちろん中規模以上の工事、例えば庁舎の新築やリニューアルにおいては、基本計画や基本設計、基本構想の段階から始めることになります。
参考イメージとして、「ゆいの森あらかわ」における基本構想と基本計画、基本設計を示しておきましょう。
「(仮称)吉村昭記念文学館基本構想」がまとまりました 荒川区公式ホームページ
(仮称)荒川二丁目複合施設基本計画を策定しました 荒川区公式ホームページ
(仮称)荒川二丁目複合施設の基本設計がまとまりました 荒川区公式ホームページ
さて、実施設計まで進んだとします。
まずは現地調査で得られた情報や事前計画を材料に、工事の図面を作成することになります。
作成するのは、配置図や全体平面図、断面図、天伏図、必要があればそれぞれの詳細図面。
改修工事では既存施設のどの部分を改修するのかをハッチで示したり、現況と改修内容がきちんとわかるような図面を作成しなければなりません。
これらを、CADと呼ばれる作図ソフトを使用して作成します。
実施設計図の参考イメージ(福井コンピュータアーキテクトHPより)
工事図面が完成した後は、図面で表現できない事項を書き連ねた各種仕様書を作成します。
どこの官庁営繕工事でも従う内容は国土交通省作成の共通仕様書に記載されていますので、工事毎に作成する仕様書は特記仕様書とか特則仕様書とか呼ばれます。
積算
次は工事の金額を計算するフェーズで、積算と呼ばれます。
作成した工事図面から、必要な材料や作業の数量を全て拾い上げます。(数量拾い)
次にそれらを数量計算書としてまとめ、必要な数量を決定します。
数量計算書の参考イメージ(建物診断設計事業協同組合HPより)
数量計算書が完成した後は、設計書と呼ばれる工事の内訳書を作成します。
工事図面からだけでも、工事に必要な作業や材料についての情報を読み取ることは可能ですが、それだけでは解釈に幅のある部分も出てしまいます。
それを防ぐための参考として、役所では工事金額の算定に用いた項目(細目など)とそれぞれの数量を、補助的に公開するのです。
例(適当です)
細目 | 摘要 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
コンクリート打設 |
普通コンクリート 呼び強度?? スランプ?? 打設手間共 人力 |
??㎥ |
ここで大事なのは、公開されるのは細目名称と数量のみで、単価の情報は隠されていることです。
役所で使っている単価は機密情報とされ、流出が厳しく禁止されています。
入札候補者はその空欄に独自の金額を入れて、入札価格を決めるわけです。
実際のRIBC画面イメージ(一般財団法人建築コスト管理システム研究所HPより)
この設計書が確定することで設計作業は完了。
ここで作成した一式のものが、設計図書となるわけです。
設計図書(せっけいとしょ)とは、工事を実施するために必要な図書で、設計の内容を示す書類。図面(設計図面)・設計書及び仕様書・その他の書類(現場説明事項書や構造計算書等)からなる。建築物や工作物の製作・施工に必要な図面類と仕様書の総称。実施設計図書とも呼ばれる。
(wikipediaより)
決裁
営繕業務に限ったことではありませんが、役所が意思決定することを一般に決裁と呼びます。
これで決定、フィックスだということですね。
設計図書の作成においても、
①金額算定前(金額抜き設計図書)→②金額算定後(金額入り設計図書)→③工事契約を依頼しますよ(工事施行)の3段階において決裁をする必要があります。
決裁とはつまり、ハンコです。
工事の規模に応じて、課長までの案件であったり、部長までの案件であったり、局長までのハンコが必要な案件と様々。
担当者から始まって順番に回議し、必要なハンコが揃った時に、決裁となるのです。
横浜市の起案用紙(横浜市行政文書取扱規程より)
工事の設計図書が確定したところで、工事契約を担当する部門に持ち込みを行い、工事入札となるのです。
設計業務委託
大事な情報を最後に出すわけですが。。
ここまでに説明した設計業務を、公務員が直営で行うことはほとんどありません。
小規模な工事を除いては、設計業務自体を設計事務所やコンサルタントに丸投げ委託するのです。
ですので、複雑の図面の作成や積算業務、実際に手と頭を動かすのは受託業者ということになり、行政担当者はあくまで委託業務を監督する立場にすぎません。
もちろん、監督する上では工事の内容を理解する必要はあるのですが、専門技術を有する設計事務所が実作業を担うことになります。
行政担当者は必要な調整(庁内関係課や監督官庁との打合せ設定など)を行うほか、図面の途中チェックをすることとなるのですが、技術や専門知識が蓄積されていない素人目線のチェックになってしまいがちなデメリットは残ります。
行政担当者が直営設計を行わなくなった背景には、市内中小企業へ仕事機会を与えようという意図があります。
まとめ
以上、役所の営繕業務の半分である設計業務について、簡単に説明してみました。
工事を発注する前に、設計図書を作成するということ。
そして、その作成業務自体も外注化されており、行政職員が自ら図面を描画することは少なくなっているということ。
行政職員が、外注化された仕事のチェック係になってしまう昨今においては、責任が不明瞭になってしまうことから、積算ミスが増えてしまうのも経験的にうなずけるものです。
その積算ミスは、たまに起こる事件によって明るみに出ることとなるわけですね。
役所就職志望の建築学生への参考に - 「なぜ役所を辞めたのか?第1回 役所における建築の仕事」
先日、市役所勤務時代の職種同期の忘年会にお邪魔しました。
実は退職してから集まりに顔を一切出しておらず、緊張しながら久々の横浜へ。
どんな顔を見せれば。。。?
そんな心配はいらぬものでした。
フタを開けると、なんとそれはサプライズの送別会でした。
緊張で過呼吸になりながら職場同期の忘年会に行ったらサプライズで送別会されて寄書きと花束もらってカラオケまで楽しんだのに終電逃しそうになって豪雨の中駅まで全力疾走したら紙袋の底が抜けて寄書きを紛失したのが今。。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月22日
職種同期より送られた花束
さて、そういえば退職に関する記事を書いていませんでした。
今年のこととは言えやはり記憶が薄まってきているな。。
よし、思い出せるうちに書きとどめておこうと思います。
なぜ退職を決めたのか。
そもそも役所で建築職員は何をやっているのか。
そして公務員を辞めるとどうなるのか。
第1回 役所で、建築職員は何をやっているのか?
今日はさわりとして、ここから。
私は2014年4月に、人口日本一の政令指定都市に技術職員として入庁しました。
大学院で都市計画・まちづくりを専攻していた私は、建築専門の技術職員を選択。
有り体に言えば、”大学で学んだことを公共に還元したかった”のです。
ここで基礎的な情報ですが、役所で建築系の技術職員といえば3つの職域に分かれます。
もちろん、その自治体が市町村レベルの基礎自治体か、それとも都道府県レベルの広域自治体かどうかということや、建築主事を置く特定行政庁なのかどうかということも関わってきますので、一概なことは言えません。
今回挙げる例は、神奈川県のとある政令指定都市(もちろん特定行政庁)を想定しています。
特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)は、建築主事を置く地方公共団体、およびその長のこと。建築の確認申請、違反建築物に対する是正命令等の建築行政全般を司る行政機関。 建築基準法第二条第三十五号に規定されている。
(wikipediaより)
①建築行政を司る職域(建築行政)
これから工事されようとしている建築物が、果たして適法かどうかを審査する業務です。
建築という行為はもちろん個人的なものですが、各々が敷地に好き勝手な建築物を作っていては秩序ある街が形成されないことから、法律に基づくルールに則って立てられる必要があります。
具体的には、建築確認申請(建築基準法)や開発許可(都市計画法)などが代表的で、総じて法律を司る番人としてのお仕事と言えます。
役所においては新人職員の登竜門と位置付けられ、ここで洗礼を受けることで、法解釈に関する専門性を向上させることとなります。
実際、一年目の半数近くがこの部門への配属でした。
②自ら都市整備をコーディネートする職域(都市整備)
※参考 高島二丁目地区第一種市街地再開発事業(横浜市HPより)
本来的には、住民から税金を集めて行う行政事業には、公平性や平等性が求められます。
当然ながらそれゆえに、投資の恩恵が限定されてしまう事業は難しい(「不公平だ!」となる)ものなのですが、都市のポテンシャルや課題解決の必要性を鑑みて、あえて全体ではなく”部分”に投資をする事業の一つが、都市整備事業だというわけです。
例えば、ターミナル駅の駅前などは人の流れも集積することから、土地利用を高度化すべきだという考え方があります。
床を増やして、商業など消費の舞台を増やすことが、ゆくゆくは公共に資することとなり、自治体経営という意味でも望ましい姿だと考えられているのです。
しかし実際多くの都市において、駅前に老朽建物が密集しているなど、本来的な土地利用がされていない、という状態になっています。
この状態を”土地の低未利用”と呼び、行政がテコ入れすることが共同建て替えや再開発事業を行い、高度化が試みられることとなるのです。
※参考記事
都市整備の別パターンとして、課題を抱えた市街地の解決ということもあります。
共同建て替えや再開発事業が、”プラスを倍増させる”動きだとすれば、こちらは”マイナスを縮める”動きと言えるでしょう。
この最たるものが密集市街地の問題で、以前のエントリにて取り上げたこともありました。
このように、都市のポテンシャルを活かしたり、課題解決のために特定地区に行政介入を行うことこそ、行政の都市整備業務です。
実務は権利者との息の長い調整や、行政内部の調整など、地道かつ長期間の仕事です。
さらに言えばこの分野は、業務のうち一定の割合が外注化されていることも特徴です。
都市計画のコンサルタントや開発事業者に業務委託を行うことで専門的作業はそちらに任せ、行政担当者は取捨選択や判断・決定をしていくことが仕事となります。
③行政組織が保有する施設のお守りを行う(建築営繕)
3つ目は比較的わかりやすいものです。
市役所や公民館、学校や公営住宅など、行政は本当に多くの建築物を保有しています。
それらを新設することも大事ですが、もちろん作って終わりではありません。
例えばタイル仕上げは経年劣化による剥落が懸念されますし、エレベーターなどの昇降機設備は定期的なメンテナンスを欠かせることができません。
ゆえに内外装や設備など、それぞれに適した周期で改修や更新を行う必要があり、工事を発注する必要が生じるのです。
実務の流れとしては、工事の内容を設計し、図面や仕様書、内訳書等からなる設計図書を作成します。
その工事情報が公告され、入札となります。
開札後、適正な有資格者が落札していれば、工事請負契約が締結されます。
そこからは、請負人が本当に設計図通りに仕上げるどうかを監督(監視)する業務。
各種施工計画書や施工図面を承認し、日々動く現場を監視し、無事かつ安全に完成されることを見届けるという。
これを営繕業務と呼びます。
ちなみに私が行政で経験したのはこの分野で、先日のエントリでそれに関連したことを書いたりもしました。
以上、そんな3分野に分けることができます。
この分類はあくまで我流のものなので、こちらもご参照ください。
http://www.city.yokohama.lg.jp/jinji/setsumeikai/semina/pdf/h26/kozima.pdf
さて次回は、なぜ退職するという決断に至ったのか。
そのへんを思い出せる範囲で書いてみようと思います。
荒川区景観まちづくり塾が一応終わったけど、次につながりそうな予感がしている話。
ブログでもたびたに話題にしておりました、荒川区景観まちづくり塾という連続講座が12/17の最終プレゼンをもって終了いたしました。
全8回という長丁場だったわけですが、私は開講に気づくのが遅れ、第2回から聴講。
初受講した内容があまりにイメージと違うものであったので、そのときの感想を記事にしたこともありました。
そんな洗礼を受けながらも、我ながらよく通い詰めたものだ。
前半の座学から、後半はグループワークとなり、担当地域の景観・防災資源をマップに落とし込む作業に入っていきました。
ここから参加者同士の相互交流が起こるようになり、横浜市在住なのに荒川区の講座を受講しに来ているという私のことも面白がってもらえるようになります。
私の所属した「町屋・荒川地域」は、年配の方が多い割には区政やまちづくりというものに強い課題意識と気概をお持ちの方々ばかりでした。
そのためか、「この講座はマップを作って終わりなのか?」「単なるカルチャースクールに終わってしまうのか?」ということを早くから問題提起し、グループワークの方向性を、”提案型”に大きく針路変更してしまいました。すげえ。
その時の簡単ないきさつがこちら。
私が余所者ながら苦心したのが、提案型にはしたいものの、単なる陳情には終わらせないということです。
つまりは「区民でこんなことを考えたから、あとは区でやってくれ」というスタンスに陥ることを避けたかった。
区民からの提案とはいえ、行政の予算・事業計画に存在しない事業(つまりはポッと出)が前向きに検討される可能性が極めて低いことは、行政経験からイメージできたからです。
だから、グループワークの議論の中でも若輩ながら、「それ、これこれこうしたら我々でできませんかね?」という発言をさせていただきました。
そんな議論の下で提案されたものが、以下の3項目です。
1、”あらかわ路地コンテスト(仮称)”の開催
2、新複合施設「ゆいの森あらかわ」をまるごと活用した市民イベントの開催
3、京成電鉄高架下の活用方法検討ワーキング
詳細や事業スキームは今後詰めていこうと思っています。
ひとまずの落とし所は、平成29年3月3日(金)に開催予定の「荒川区景観まちづくりシンポジウム」にて発表いたします。
ただの講座受講に終わらせることなく、次の活動に繋げていくという目標が、その通りになりそうだという幸運な展開。
町屋地域の町会や景観まちづくり推進委員会とのつながりを作ることができたので、受講前よりはかなり状況が好転しました。
引き続きこちらでも発信していきたいと思います。
また、興味のある方はご連絡いただければ、ぜひ一緒にやりましょう。
東京都の積算ミスに対する音喜多先生のコメントにやや違和感。
学生時代より尊敬している音喜多さん(現職都議)の記事から。
この報道に関する内容です。
東京都が今年度に行った40の公共工事の入札で、落札条件の一つとなる「最低制限価格」を誤って設定し、このうち8つの入札では、本来落札できた業者が工事を受注できなかったことが都の調査でわかりました。
東京都は先月、下水道設備の入札で落札条件の一つとなる「最低制限価格」の設定を誤るミスが見つかったことを受けて、ことし4月以降に行ったすべての入札について緊急調査を行いました。
その結果、40の入札で同じようなミスが見つかったということです。(上記記事より)
要は、本来正しく算出されるべき工事価格において積算上の誤りがあったため、最低制限価格にもズレが生じたということ。
本来の金額であれば最低制限価格未満とはならずに落札なっていたはずの業者が、みすみす受注機会を逃すことになったということです。
この問題に対して音喜多さんは、以下のように指摘しています。
最低落札価格は計算ソフトなどによって算出しているはずですが、これだけ多くの入札でミスが発覚したということは、間違った値や数式を入力したフォーマットを前例踏襲していた恐れがあります。
何より根深いのが、そうして出てきた誤った値に都職員が気づかずにスルーしていることです。
事業内容に対して理解があり、「この案件で妥当な金額は○○億円~✕✕億円だな」という相場観さえ持っていれば、誤った金額を見れば違和感が働くはずです。
(上記ブログ記事より)
全くの的外れではないのですが、少しセンセーショナルに、誇張されすぎている気がします。
煽り?
この件について、私が実際に地方公務員として工事設計・積算実務を経験した立場から勢いでツイートしたものを並べてみます。
うーん。。行政で実際に工事積算実務してた身としては、問題はそこではない気がするのです。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
まさかの落札条件の設定ミス。都職員には適切な「事業の見積もり能力」「金銭感覚」があるのか? | 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト https://t.co/DWCRKPXyZw
物品調達は確かに見積もりによるもので、付き合いの長い業者であれば市場感覚と異なる金額をふっかけることもあるのかも。相場がわかりにくい調査委託であれば受託するコンサルも死活問題なので、そういう傾向はあるのかもしれません。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
ただ工事価格は違って、積算基準という厳密な規定があるはず。役所で設定された単価と刊行物単価(いずれも市場調査による)を必要数量積み上げて算出した直接工事費(図面からわかる、工事に必要なもの)に、経費と呼ばれるものを乗せて決まります。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
難しいのはおそらくこの経費計算で、共通仮設費、現場管理費、一般管理費の三種類に分かれていること。そしてそれぞれの算出の仕方が、直接工事費に一定の比率を乗じて求める費目(社会保険料とか人件費とか)と、必要な金額を直接積み上げるべき費目(足場とか廃棄物処理費用とか)が混在してること。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
同じ事案を報じるこちらの記事を見ると、ピックアップされている工事についてはいずれも経費計上にあたるものが原因のように読み取れます。https://t.co/BiKcLZRKQV
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
.@kenplatz_ed 経費の種類によって比率が違うので、分類を誤ると工事価格は本来あるべき数字と異なるものとなります。当然最低制限価格も変動して、今回のようなことが明るみに出るのです。とりあえず背景についてはこんな感じでしょうかね。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
.@kenplatz_ed 原因①→積算ミス防止策として、設計者自身の検算に加えて別の職員によるダブルチェックのシステムはどこでも持っているはず。ただ積算実務に熟達していない行政職員によるチェックなので、年間発注スケジュール遵守というプレッシャーのもとにいる検算者がザル検算をしてしまう可能性はあるでしょう。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
入札前の工事価格に関わる業務なのでむやみに数字を出せないという事情ゆえの職員検算なのですが、素人検算という限界はあります。こうした事件を受けて、信頼できる外部の専門調査機関に検算業務を依頼するような転換があればよいのにと思います。既にそういう自治体あるんでしょうかね。
— こむば氏@荒川 (@KMB_Masa) 2016年12月17日
・・・と、いう感じです。
金銭感覚の話がないわけではないのでしょうが、それよりは、年間発注スケジュールを遵守することが至上命題であり、プレッシャーの下にある行政担当職員の下では、またこういうことは何度でも起きるのだと思います。
根本的な仕組み、例えば検算業務の外注化などこそ有効のように思われます。
ウサギに囲まれた癒しカフェ「lapin(ラパン)」 - 「町屋銀座まちづくり? 第25回」
こんなところにもお店があったのか。
鈴木製作所の近く、第四峡田小学校の西向かい。
lapinという、病院などの待合室のようなカフェがありました。
ホットコーヒーで300円。
一杯淹れな上に、ちょっとしたお茶菓子もついてお得な感じです。
内装はこんな感じで、新しいお家に遊びに来たような感覚です。
お店の方に聞くと、カフェを開いて既に11年だとか。
。。。そうは見えない!
私がお邪魔した時はすべて空席でしたか、お店のスタッフさん向けに手土産のようなものを渡しに来る方が2,3名いらしたので、こちらも鈴木製作所同様地域に愛される居場所なのかもしれません。
お店の奥にはマッサージ屋さんもあるようですが、こちらは別の方がやっている模様。
うん、こちらも素敵な場所でした。