no pleasure, no life(旧ブログ名:まちづくり、例えばこんなふうに)

意固地になるほどに"まちづくり"が気になって仕方ない。自分の関わったまちづくりの活動・調査の記録を中心にしつつ、"都市""街の変化"の話題など。 Keyword→まちづくり/都市計画/荒川区町屋/蒲郡/豊橋/三河/谷中

平成29年度の「荒川区景観まちづくり塾」が始まりますよ

まちづくり講座の2年目が、募集を開始してますね。

 

 

荒川区景観まちづくり塾

荒川区景観まちづくり塾2017 荒川区公式ホームページ 

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/kankyo/machidukuri/keikan/keikanjuku/keikanjuku2017.files/keikanjuku2017.pdf

荒川区景観まちづくり塾。

私にとっては、昨年度受講し、講座による学び以外にも、地元の意識ある方々との出会いなど様々な果実を得ることができた貴重な場です。

 

荒川区やその他外郭団体が主催する講座は多数あるわけですが、景観まちづくり塾は学びの内容における専門性の高さに加え、性別年齢を超えたコミュニケーション機会が豊富であるところに特徴があると感じます。

要は、年配の方々と対等に話すことができる、大学生や若手社会人にとっても刺激的な場なのです。

 

前半は、荒川区の景観行政や他自治体における行政主導型まちづくりの事例勉強。

ここでは基本的に座学で、質疑応答が過熱することはあれど、なかなか受講生同士の横のディスカッションが起こらない。

もちろん紹介されるのはいずれも魅力的な事例なのですが、いざ荒川区のまちづくりに応用できるのか?を考えた時に、膨大な投資額など、なかなか現実的なものはなかったのが正直なところです。

 

私が推したいのは後半です。

後半は身体を動かすフェーズで、昨年の例では、グループに分かれ、まちを歩いてポイントを抽出していき、マップを作成しました。

このフェーズでは、よりよい成果物を作るために、参加者の発言や提案というものが非常に求められるのです。

もちろん、熱い想いから議論の場を支配してしまう年配者もいらっしゃらないでもないのですが、かと言って若造の意見に耳を傾けてくれないということではなく、むしろ若い意見こそ珍しく、注目していただけるような感覚を持ちました。

 

この、日頃決して交わることのない年齢層や属性を持つ区民の方々と、建前なく本音でコミュニケーションするこの空間と時間がこの講座の醍醐味であると思っています。

まちづくりや地域活動に興味ある若い方が、まず一歩目を踏み入れるものとして適当であろうと思います。

むしろ若い人の受講が増えたら、予想のできない展開によって、この塾はもっと面白くなるでしょうね。

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(昨年度の様子) 

景観と防災、これが難しい

ただ、難しいのはテーマ設定にあります。

 日々の生活が営まれている街には様々な景観があります。良い景観は住環境を整え、生活に潤いをあたえてくれます。また、 荒川区における重要な課題に「防災」があります。首都直下地震が想定されている現在、木造密集市街地を多く抱えた荒川区では、区民の安全・安心のために数多くの防災に関する施策を進めています。
 そこで、昨年度に引き続き「防災と景観」をテーマに「景観まちづくり塾」を開催いたします。慣れ親しんだ街の風景の中に溶け込む防災対策や、風景を含めて愛着の持てる街をどのようにつくっていくかなど、「防災」と「景観」の両輪で進めるまちづくりについて、一緒に学び考えていきます。

荒川区HPより)

このように、今年度のテーマも昨年に引き続き「景観」と「防災」ということなのですが、この2つを有機的に結びつけて考えるのがなかなか難しい。

これについては昨年度も言及しました。

phantom-gon.hatenadiary.com

少し長いですが、こちらの記事から抜粋します。

(中略)私も感じていた違和感が他の受講生の方々からも噴出していました。
「マップをまとめてどうすんの?」
「防災と景観を並べるのは無理があるんじゃないの?」
というもの。

  改めて確認すると、今回の連続講座「荒川区景観まちづくり塾」の成果物は、まちの防災・景観スポットを台帳化し、それを携帯できるマップに落とし込むこと。 

その意図としては、以下のような感じ。
生存の基本ではあるものの、常に気を張っているわけにはいかない"防災情報"だけをまとめたマップでは日常的に携帯されず、すぐにタンスや書棚の奥にしまわれしまいます。
それではいざ有事の時に活用されないという、本末転倒なことになってしまう。
より防災を日常に近づけるためは"景観まちづくり"の要素が必要だということ。
防災マップよりは日常に近づいた、まちあるきマップのようにすることが有効ではないかと考えられているのです。

しかし実際に荒川区を歩いて見ると、事情が少し異なるのです。
例えば区内を歩いてみると、防災的に危険な箇所としては狭い路地空き家が挙がります。
他にも防災広場やかまどベンチやマンホールトイレなどを挙げることはできます。
それらは、災害時の危険性を表したり、有事に活用されるべきものではあれど、あまりに"防災"に特化しすぎているのです。
景観的な重要性があるかと言えば、そこには大きな乖離があると言わざるをえません。

逆に、"景観"と言われた時に荒川区で何があるかといえばどうでしょう。隅田川がつくる親水空間や荒川自然公園の広大なオープンスペースのように、ある程度の大きさと広がりを持つ要素であれば、まだ景観と防災の俎上に上がるでしょう。
でもそれ以外に、あくまで街場の良好な景観として挙がるものと言えば?
江戸以前の歴史的な要素は点在していますが、多くの古い街並み(関東大震災後?)は風情があるものの、その多くは老朽木造住宅。
付近にお住まいの人にとっては災害時の火種としての危険性ばかりが気になってしまいます。
未接道であったり経済的な理由であったりで容易に建て替えられない、だからこそ年月を経て深みを増した建物も、今や街の防災力を押し下げる足枷と言わざるを得ません。
事実、私が本講座において「古い密集した街並みが好きなんですよね」と言っても、意外な顔をされるばかり。 
そんな荒川区で、求められるようなマップを作ったとしても、受講者自身がそれに何の価値も見出さないものとなってしまいます。
乖離した要素である景観と防災をごった煮にしたところで?という。

 

また、こうした2つの看板を掲げてしまった場合、「景観」を求めて受講する方と、「防災」を求めて受講する方の間の温度差にもつながりかねません。

こうした難しい事情が昨年度あったわけですが、それでも今年度もこの路線で開催されるということ。

塾に求めるのはカルチャースクールか政策提案か

もう一つ難しいところもあるのです。
それは、この景観まちづくり塾はあくまで学ぶための"塾"なのか、それともワークショップを通じて合意形成して政策提案まで持っていくためのアリーナなのか、ということ。

要は、参加者が求めるのが「知識の習得とコミュニケーション」にあるのか、それとも「行政に物申すこと」にあるのか一枚岩ではないことです。

 

個人的にはどっちでもいいのですが、講座の意図がどちらなのかをあらかじめ説明されないと、受講者のモチベーション低下や参加率の低下、満足度の低下にもつながりうるでしょう。

ちなみにチラシでは、”学び”の要素に重点が置かれているようです。

 

さて、今年はどうなるでしょうか。

会場は「ゆいの森あらかわ」、応募締切は7月10日まで。